「七草の日（1月7日 年中行事）」はどんな日？
✅ 「人日の節句」に七草粥を食べて無病息災を願う日本の伝統行事の日。
✅ 七草それぞれに薬効があり、早春に芽吹く力をいただく風習がある。
✅ 室町時代の汁物文化が原型で、江戸幕府が制度化したことで全国に広まった。
七草の日（1月7日 年中行事）
お正月明けに「ほっ」と一息、七草粥が心に沁みる日
お正月のにぎやかさが落ち着き始める1月7日。ちょっと気が抜けて、体も少し重たく感じるこの日に、静かに日本人の心と体を整える伝統行事があります。
それが、「七草の日（ななくさのひ）」です。
この日、私たちは「七草粥（ななくさがゆ）」を食べて、一年の無病息災を祈ります。
また、年末年始のごちそうで疲れた胃をやさしくいたわるという、まさに“日本らしい思いやり”に満ちた習わしでもあります。
七草とは、春の訪れを告げる7種類の植物。セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ。
聞き慣れない名前もあるかもしれませんが、実は私たちの体にやさしい効能を持つものばかり。
この記事では、そんな「七草の日」についての由来や歴史、七草粥の意味、関わりのある人物や組織、そしてよくある疑問まで、まるごと丁寧にご紹介します。
読むだけで誰かに話したくなる、心も温まる日本の行事「七草の日」。
その奥深さと魅力に、ぜひふれてみてください。
七草の日の由来とは？
古代中国から受け継がれた「人日の節句」が始まり
「七草の日」は、五節句のひとつ「人日（じんじつ）の節句」に由来します。「五節句」とは、季節の節目にあたる5つの行事の日のことで、七草の日はその年最初の節句にあたります。
■五節句一覧
- 1月7日：人日の節句（七草の節句）
- 3月3日：上巳の節句（桃の節句）
- 5月5日：端午の節句（菖蒲の節句）
- 7月7日：七夕の節句（星祭）
- 9月9日：重陽の節句（菊の節句）
「人日」はもともと古代中国の「六畜占い」という風習に起源があります。
1月1日から6日までをそれぞれ鶏・犬・羊・牛・馬・猪の日とし、7日目を「人の日」としていました。
この日には、人を罰することを避け、未来の平穏を祈る日とされていたのです。
そして、この「人日」に無病息災を願って薬草の汁物を飲むという風習が生まれ、それが日本に伝わりました。
日本では、古くは「若菜摘み」という行事がありました。
これは年明けに芽吹いた若菜を摘み、生命の息吹を体に取り入れるというもの。
この「若菜摘み」と中国の「人日の節句」が融合し、「七草粥」という日本独自の文化が誕生したのです。
平安時代には宮中行事として、室町時代には庶民の間にも広まり、江戸時代には幕府が公式に制定。
七草の日は、長い時を経て今も日本の年中行事として受け継がれています。
七草の日に食べる「七草粥」とは？
春の七草、それぞれの意味と効能
「七草粥」は、春の七草をおかゆに入れて炊いた料理です。
お正月の豪華な食事で疲れた胃腸を休ませながら、自然の恵みに感謝し、一年の健康を願う、まさに“癒しの一杯”。
■春の七草とその意味・効能
| 名前 | 効能・意味 |
|---|---|
| セリ | 解毒・整腸作用。「競り勝つ」に通じる縁起物 |
| ナズナ（ぺんぺん草） | 利尿・止血作用。ぺんぺん草とも呼ばれ、身近な草 |
| ゴギョウ（母子草） | 喉の炎症を鎮める。草餅の材料にも使われる |
| ハコベラ | 口内炎・歯茎の腫れに良い。歯みがき粉にも使われた |
| ホトケノザ | 食欲増進・消化促進。仏様の座に見える葉が由来 |
| スズナ（カブ） | 胃腸にやさしく、ビタミンが豊富 |
| スズシロ（ダイコン） | 消化を助け、咳を鎮める。白さは清浄の象徴 |
これらの七草は、寒さの中でもたくましく芽吹き、春の訪れを知らせてくれる植物たちです。七草粥には、そんな早春の生命力を取り入れる意味も込められています。
また、地域によっては七草が手に入りにくいことから、小松菜やほうれん草など他の青菜で代用することもあります。
最近では、スーパーやコンビニでも「七草セット」が販売されており、誰でも気軽に伝統行事を楽しめるようになりました。
七草の日と関わりの深い人物・団体とは？
天皇と江戸幕府が支えた七草文化
七草の日に関わりのある人物といえば、まず平安時代の天皇や貴族たちが挙げられます。
当時、宮中では「若菜摘み」という行事があり、天皇自らが若菜を摘むこともあったといわれています。
この行事は、自然との調和を大切にする日本文化の象徴とも言える儀式でした。
そして七草文化を庶民の間にまで広めた最大の功労者は、江戸幕府です。
幕府は、「五節句」を公的な祝日として制度化し、1月7日の「人日の節句」には「七種粥（しちしゅがゆ）」を食すことを推奨しました。
この政策によって、七草粥は武家や庶民の間にも広まり、全国的な風習となっていったのです。
現代では、農協（JA）や地域の直売所なども「春の七草セット」の販売を行っており、地域の農家と家庭をつなぐ役割を果たしています。
七草の日に関するよくある質問
Q1：七草粥を食べるのは朝じゃないとダメ？
A1：伝統的には1月7日の朝に食べますが、生活スタイルに合わせて夜でも大丈夫です。大切なのは「無病息災を願う心」です。
Q2：七草を全部揃えられないときはどうする？
A2：代用野菜でも問題ありません。小松菜や水菜など身近な青菜で作る七草粥も、立派な節句料理です。
Q3：「七草爪の日」ってなに？
A3：「七草爪の日」とは、七草を煮た汁に指を浸して爪を柔らかくし、その日に爪を切ると健康に過ごせるとされる風習です。
七草の日（1月7日 年中行事）をきっかけに、家族の時間を楽しもう
七草の日は、ただ伝統を守るだけの日ではありません。
家族と食卓を囲みながら、健康や自然に感謝する「心を整える時間」でもあります。
七草の名前を一緒に覚えたり、「なぜこの日なの？」と子どもと話してみたりすることで、世代を超えて文化がつながっていきます。
冷えた体をやさしく温める七草粥を囲みながら、1年の健やかなスタートを迎えてみてはいかがでしょうか。