六日年越し(1月6日 年中行事)はどんな日?
✅ 正月七日を「七日正月」とするため、その前日である1月6日を年越しとして祝う風習の日。
✅ 地方によって「神年越し」「女の年越し」「馬の年越し」などとも呼ばれ、七草粥の準備が始まる日でもある。
✅ 七日正月に行われる行事に関わる家庭や女性、農家といった人々が深く関わってきた。
日本の心が宿る「六日年越し」という不思議な節目
お正月といえば、いつを思い浮かべますか?
多くの人にとっては、12月31日から1月1日へと年が明ける瞬間が「年越し」ですよね。
でも実は、日本にはもうひとつの「年越し」があるのです。それが、1月6日の「六日年越し(むいかとしこし)」と呼ばれる伝統行事。
普段のカレンダーではあまり見かけることのないこの言葉。ですが、かつての日本人にとっては、とても大切な一日でした。
正月行事の区切りとして、また七草粥の準備として、古くから日本各地で受け継がれてきた「六日年越し」。
この記事では、その由来や意味、各地の風習、そして私たちが忘れてしまった“節目を大切にする心”について、やさしく丁寧にお伝えします。
六日年越しの由来とは?名前に隠されたもう一つの年越し
「六日年越し」は、1月6日に行われる正月の節目の行事です。
1月7日は「七日正月」といって、正月の締めくくりの日。全国的に有名な七草粥を食べる日として知られています。
この七日正月に向けての準備が始まる前日、つまり1月6日が「六日年越し」なのです。この日には、正月の一区切りとして、もう一度身を清め、新たな年の節目を迎えるような意味が込められていました。
まるで、12月31日に年越しそばを食べ、1月1日に新年を祝うのと同じように、1月6日には七草の準備をして、1月7日には七草粥を食べて、無病息災を願う——
この流れそのものが、「正月」というひとつのサイクルの中で、もう一つの“年越し”と考えられていたのです。
呼び名も多彩!地域ごとに異なる六日年越しの風習
六日年越しは、地域によって様々な名前で呼ばれてきました。
たとえば、「神年越し(かみとしこし)」と呼ばれる地域では、神様を家から送り出す節目の日とされており、神棚の掃除やお供えの整理が行われます。
「女の年越し(おんなのとしこし)」という呼び方をする地域では、正月三が日を中心に家族や来客の世話をし続けた女性たちが、やっと一息つける日とされていました。
この日は、女性たちが少し豪華な食事をとったり、集まっておしゃべりを楽しんだりするという風習もありました。
また、「馬の年越し(うまのとしこし)」と呼ばれていた農村地域では、農耕に使う馬をねぎらい、特別な餌を与える習慣がありました。馬の健康を祈るこの風習には、農家にとっての馬の重要性が表れています。
このように、六日年越しは「単なる前日」ではなく、その土地その土地での生活や信仰に根ざした、とても意味深い一日だったのです。
七草粥の準備から見る、日本人の丁寧な暮らし
七日正月といえば「七草粥(ななくさがゆ)」ですね。あなたは最近、七草粥を食べましたか?
現代ではスーパーなどでセットが売られていますが、昔はすべて自分で摘んで、準備をしていました。その準備こそが、六日年越しの中心的な行事です。
七草粥に入れるのは、「春の七草」と呼ばれる7種類の野草。
- 芹(せり)
- 薺(なずな)
- 御形(ごぎょう)
- 繁縷(はこべら)
- 仏の座(ほとけのざ)
- 菘(すずな:かぶ)
- 蘿蔔(すずしろ:だいこん)
これらをまな板の上に並べ、包丁で刻みながら、こう唱えます。
「七草なずな、唐土の鳥と日本の鳥と、渡らぬ先に…」
この言葉は、疫病や災厄が“海を越えて日本に入ってこないように”という願いが込められた呪文のようなものでした。
まな板を叩くリズムに合わせて、子どもたちと一緒に唱える家庭もあり、家族で健康を願うあたたかな時間が流れていたのです。
「節目」を意識することの大切さを教えてくれる行事
六日年越しの最大の魅力は、「節目を丁寧に迎える」という、日本人ならではの暮らし方にあります。
1月1日が大きな「始まり」ならば、1月6日はその小さな「締めくくり」。そして1月7日は、次なる「始まり」。
日本人は昔から、こうした節目を細かく大切にしてきました。
それは、毎日を流れのままに過ごすのではなく、区切りを設けることで、自分自身の心も整え、前向きに生きていくための知恵でもあったのです。
六日年越しは、忘れかけていた「区切りの文化」を、今の私たちにもう一度思い出させてくれます。
六日年越しに関するよくある質問
Q1. 六日年越しは全国共通の行事ですか?
A1. 一部地域では風習として残っていますが、全国的に広く知られている行事ではありません。主に関東・東北・一部の農村地域に伝わります。
Q2. 七草をたたくときの「呪文」にはどんな意味がありますか?
A2. 「唐土の鳥と日本の鳥と…」というのは、異国からやってくる災いを避けるための言葉で、無病息災を祈願する意味があります。
Q3. 七草粥の準備は必ず六日にしなければいけませんか?
A3. 現代では六日に準備する家庭は少ないですが、伝統的には6日の晩に準備し、7日の朝に食べるのが正式な流れです。
六日年越し(1月6日 年中行事)のまとめ
六日年越しは、七日正月の前日として、七草粥の準備をしながら無病息災を願う日本独自の伝統行事です。
「神年越し」「女の年越し」「馬の年越し」など、地域によってさまざまな名前で呼ばれ、家族や神様、家畜への感謝が込められた、とてもあたたかい行事です。
普段、忙しく過ごしていると、「今日が何の日か」など忘れがちですが、この1月6日をちょっとだけ特別な日として意識してみると、きっと新しい年をより丁寧に、生き生きと始められるはずです。
あなたの家でも、今年は七草の準備を前日の夜から始めてみてはいかがでしょうか。小さな行事から始まる、大きな心の節目を感じてください。
