農山漁村女性のための国際デー（10月15日）はどんな日？
✅ 国連総会が2007年に採択し、2008年から毎年10月15日に実施する、農村・漁村に暮らす女性の地位向上をめざす国際デーです。
✅ この日は、彼女たちの持つ食料生産・環境保全・地域コミュニティ維持などの役割に光を当てます。
✅ 国連の「UNウィメン」が中心となり、政府・NGO・地域団体が連携して各国で啓発と行動を呼びかけています。
見えない力に光をあてる日
「もし、あなたのお皿にのった一皿の食事が、誰かの知られざる努力で支えられていたら――」
そう想像してみてください。
私たちが毎日口にする野菜、魚、米、それらの裏には、都会の誰にも注目されずとも毎日続けられてきた営みがあります。
その影の力こそが、農山漁村で働く女性たちの手と知恵です。
彼女たちは、土地を守り、種を選び、潮の変化を見極めながら家族を支え、地域をつなぎ、未来を育てています。
にもかかわらず、世界のあちこちで「見えざる存在」にされてきました。
そうした現実に風穴をあけるために設けられたのが、**「農山漁村女性のための国際デー（10月15日）」**です。
この日は、ただ記念するだけでなく、声を届け、意識を変え、行動を促す日です。
本記事では、この日が生まれた背景、そこに込められた意味、現場の息遣い、そしてあなたができることを、ストーリーと事例を通じて丁寧に伝えていきます。
農山漁村女性のための国際デーの由来：国連が描いた使命
なぜ10月15日なのか？決定の経緯
2007年12月18日、国連総会は議論を重ねた末、10月15日を「農山漁村女性のための国際デー（International Day of Rural Women）」と定める決議を採択しました。
その理由は、この日を通じて「農村部における女性の問題を国際的な議題に引き上げる」ことにありました。
2008年から実施が始まり、以降、毎年10月15日に、世界中でテーマを掲げた啓発活動が行われています。
この日には、政府やNGO、地域団体が集まり、シンポジウム、展示、ワークショップ、報告発表などを行い、問題の可視化と解決策の議論を広げています。
決議採択時には、農村女性の政治参加、経済的自立、教育や保健医療、土地所有権、災害対策など18項目にわたる要請が盛り込まれました。
こうした包括的な視点は、ただの記念日ではなく、持続可能な開発とジェンダー平等を統合する枠組みを意図しています。
「農山漁村女性」という言葉の重みと背景
「農山漁村女性」という言葉自体が持つ意味は深く、単に農業・漁業に従事する女性に限りません。
地域に暮らし、自然と調和しながら家族を支え、共同体を築くすべての女性です。
多くは複数の役割を同時に担っています。
たとえば…
- 農作業者として、土を耕し、種をまき、収穫をし、土壌を守る
- 漁業者として、潮を読む、漁網を整える、漁場を守る
- 家庭の中で、炊事・育児・介護・家計管理という「無償労働」
- 地域のつながり維持者として、伝統行事・共同活動・助け合いの役割
このように、多層的な活動を通じて、農山漁村女性は社会の土台を支えています。
歴史的に見ると、都市化・産業化の波で「都市への人口流出」が進み、地域を離れた男性が多くなる一方で、地域に残る女性たちの負荷は増えてきました。
そのうえで、土地所有権・資源利用権・教育・市場アクセスなどの点で、女性が不利な制度設計・慣習・文化構造に阻まれるケースが多く存在してきました。
こうした現実に対峙するため、国連はこの日は「行動を促す日」として定めたのです。
見えざる誇りと重荷を支える知恵
女性が担う世界を支える「役割」
農山漁村女性の影響は、地域を超えて国や世界の食料安全保障・環境保全・気候変動対策にもつながります。
たとえば、世界の作物の多くは女性が手をかける農場で育てられており、その管理・保全率が高いと、土壌劣化や水害被害が抑えられることが分かっています。
また、漁村では持続可能な漁業資源管理や海岸環境の保全に女性の伝統知が活かされる事例も多く報告されています。
こうした「小さな営みの連続」が、地域の持続性・気候変動への適応力を支えています。
データが語る「見えない格差」
世界全体で、農業従事者のうち女性比率は約43％とされます。
しかしそのうち、正式な土地所有権を持つ女性はわずか15％未満という国すらあります。
市場へのアクセス、公的支援・補助金への参入、技術訓練への参加率など、あらゆる面で女性の参入障壁があります。
教育面では、農村地域における女子の識字率は都市部より低く、医療・保健サービスへのアクセスも限定されやすいのが現実です。
こうした不均衡は、単なる統計ではなく、数百万という日常の選択肢を制限するものです。
比喩で捉える視点：「地球の肺を支える心臓のような存在」
もし地球をひとつの生き物と考えたら、農山漁村女性は、地球の肺を保ち、地域に酸素を送り込む心臓のような存在です。
彼女たちの手を通じて、種子は育ち、水は浄化され、生態系のバランスが守られる。
その影で、困難や制約に苦しむ姿を想像すると、この1日をしめす意味は、一層強くなります。
国連、UNウィメン、各国政府、地域組織
UNウィメン：理念と実践のハブ
「UNウィメン（United Nations Entity for Gender Equality and the Empowerment of Women）」は、女性の権利・ジェンダー平等を推進する国連機関です。
農山漁村女性のための国際デーは、UNウィメンの理念を具体に示す象徴的な活動の一つです。
この機関は、政策提言、支援ネットワーク構築、資金調達、現地活動支援などを通して、各国政府やNGOと連携を図ります。
UNウィメンは、女性の「エンパワーメント＝力をつけること」に重きを置いており、受け身的な支援にとどまらない自立支援型アプローチを採ります。
各国政府・地方自治体の役割
農山漁村女性への支援は、各国の政策・法制度・予算配分に大きく左右されます。
土地の権利保障、補助金制度、教育・研修制度、インフラ整備、女性の参画促進制度など、制度設計次第で可能性は大きく変わります。
国内では、農業委員会、自治体農業振興課、女性センター、農協・漁協などが、女性農家・漁師を支える拠点となります。
これらの機関が国際デーを契機にイベントを開いたり、支援制度を改定したりする例も増えています。
NGO・地域団体・女性リーダー
最前線では、地域の女性たち自身が組織化し、自ら声を上げ、意見をまとめ、政府と交渉する動きもあります。
たとえば、ある村では女性たちが「作物の共同購買・共同販売所」を作り、利益を地域に還元するモデルが動き始めています。
また、女性リーダーたちは学校で教えたり後進を育てたりし、若い世代の夢をつなぐ橋渡し役となっています。
こうした地域発信型の動きが、記念日の意義をよりリアルにするのです。
世界と日本における具体事例と現場の声
海外事例：インドの農山漁村女性支援
インドでは、農村部で女性が自ら組織する「セル・ウーマン・グループ」が盛んです。
彼女たちは集団でマイクロクレジット（小額融資）を活用し、種苗購入・小規模加工事業・養蜂・養鶏などを展開しています。
成果として、収入が数倍になった女性も多く、教育費や医療費の支出が可能になったという報告もあります。
また、漁村部では女性たちが水産加工を手掛けることで、魚価の安定や地元の付加価値向上に貢献した例もあります。
日本国内の動きと課題
日本でも、農山漁村地域で女性農業者や漁業者がさまざまな活動をしています。
たとえば、地域起こしの一環で「直売所運営」「農家民泊」「加工品開発」「伝統文化継承活動」などを手がけるケースがあります。
しかし、以下のような課題も指摘されます。
- 担い手不足・高齢化で後継者が足りない
- 経営資源（資金・技術・販路）が都市部より乏しい
- 女性が意思決定に関わる制度や慣習が弱い
- 災害対策・気候変動対応力が脆弱
例えば、とある海岸部の漁村では、漁師が沖に出ている間、女性が網の手入れ・魚の選別・加工・販路交渉まで一手に担っているという現場報告もあります。
その地域では、「女性漁業者が直販所を立ち上げてブランド魚を売る」というプロジェクトが立ち上がり、地元の知名度と収益が上がった例もあります。
こうした事例は、国際デーに合わせた報告会や展示で広く紹介され、止まっていた地域活動に新たな火を付ける原動力になります。
農山漁村女性のための国際デーに関するよくある質問（Q&A）
Q1. この国際デーは法律上の記念日なの？
この国際デーは国連総会の決議によって設けられた「国際デー」であり、各国の国内法による国民の祝日とは別物です。
各国政府や地方自治体、NGOが自主的にイベントを行う形が基本です。
Q2. 日本でこの日に関連イベントはあるの？
日本では農業団体、NPO、自治体、女性団体がシンポジウムや展示、ワークショップ、報告会を各地で企画する例が増えています。
地元の直売所で女性農家の産品を集めた販売会を行ったり、写真展を開く地域もあります。
Q3. 「農山漁村女性支援」に参加したいが、何をすればいい？
まずはこの日の意義を理解し、SNSで発信することから始めてみてください。
地元の女性農業者・漁業者が関わる販売会やイベントに顔を出して話を聞いてみる。
また、女性農業・漁業支援団体に寄付したり、現場を視察・応援する。
時には行政や議員に制度改善を求める声を上げることも大切です。
あなたができること：意識を変え、行動をつなげよう
- 知ることから始める
この記念日の意味、農山漁村女性の現状、課題と可能性を周囲に広めてください。
SNS発信、ブログ投稿、友人との会話も力になります。 - 地元の商品を選ぶ・購入する
女性農家・女性漁業者が手がけた産品を意識的に選ぶことは、経済的支援になります。
「誰がつくったか」が見える商品は、消費に温かみをもたらします。 - イベントに参加・支援する
近くで開かれるワークショップ、展示、報告会などに足を運び、現場の声を聴く機会を持ちましょう。
また、ボランティアやスタッフとして関わるのもよい方法です。 - 制度改善の声を届ける
自治体や議員、農林水産省・水産庁などに対して、女性支援制度・資金助成・教育研修制度強化の要望を伝えることができます。
署名活動、意見書提出、公開質問などの形でも実行可能です。 - 学び続け、協力ネットワークを築く
女性農業・漁業に関する研究・報告書・インタビューを学び、理解を深めてください。
可能なら地域団体やNPOと手をつなぎ、継続的なネットワークを作ることを意識しましょう。
まとめ：農山漁村女性のための国際デーが示す未来
「農山漁村女性のための国際デー（10月15日）」は、食料を育て、地域をつなぎ、未来を守る女性たちの存在を再認識し、その地位を向上させようという強い意志を込めた日です。
その背景には、土地所有権・技術アクセス・市場参入・教育機会・制度参加など、女性が不利な立場に置かれてきた長い歴史があります。
しかし、国内外で具体的に動き始めた事例があり、個人の意識変化や地域レベルでの支援が次第に力を生み出しています。
あなたができることは、小さくても確かな一歩です。知り、発信し、参加し、つながりを作ること。
そうした一歩一歩の連鎖が、やがて世界中の農山漁村女性たちを取り巻く環境を変えていく力になります。
10月15日、この日をただの「記念日」にしないように。あなたの行動を、この日をきっかけに始めていただきたいと願います。
