刺身の日(8月15日)はどんな日?
✅ 『康富記』に「刺身」の名が初めて登場した日。
✅ 魚の種類を示すためヒレを刺したのが名前の由来とされる。
✅ 室町時代の公家・中原康富が残した記録がきっかけ。
ひんやりとした白い皿に並ぶ、透き通るような薄切りの魚の身。
口に運べば、噛むほどに広がる海の旨味と、ワサビのツンとした香り。
今や世界中で愛される「刺身」ですが、この料理にも実は“記念日”があります。
8月15日――それが「刺身の日」。
この日は、室町時代の公家・中原康富(なかはらのやすとみ)が残した日記『康富記(やすとみき)』に、初めて「刺身」という言葉が登場した日です。
文安5年(1448年)、約580年前の出来事が現代まで伝わり、今もこの日にちなんで記念日として語り継がれています。
「刺身」という名前は、ただ魚を切るだけではなく、そこに込められた知恵と美意識の象徴でもあります。
当時の人々は、切り身だけでは魚の種類が分からなくなるため、魚のヒレやエラを切り身に刺して種類を示していました。
これが「刺身」という名前の由来の一説。
もう一つの説は、「切る」という言葉が武士の切腹を連想させるため、忌み言葉として避け、「刺す」を使ったというものです。
それでは、この「刺身の日」の由来、歴史、そしてちょっと人に話したくなる豆知識を、じっくり味わっていただきましょう。
刺身の日の由来と歴史
刺身の日の由来は、室町時代中期にまでさかのぼります。
時の人物、中原康富。彼は朝廷の外記局(がいききょく)という部署で、文書作成や記録を担当する官人でした。
政治や儀式だけでなく、日常の細かな出来事までを克明に書き記したのが『康富記』です。
文安5年(1448年)8月15日、この日記の中にこう書かれています。
「鯛なら鯛とわかるやうに、その魚のひれを刺しておく」
つまり、魚の身を切って盛り付ける際に、その魚である証としてヒレを刺しておく――これこそが「刺身」の語源のひとつだと言われています。
当時の日本では、魚を生で食べる習慣はすでにありましたが、その多くは酢でしめた「なます」や塩で保存した加工品でした。
冷蔵技術のない時代、生の魚を食べられるのは港町や川の近くなど、一部の地域だけ。
しかも鮮度を保つためには、漁から食卓までの時間を極力短くしなければなりません。
だからこそ、刺身はご馳走。
宴席や特別な行事の場で出される料理だったのです。
興味深いのは、『康富記』よりもさらに古い応永6年(1399年)の『鈴鹿家記』にも「指身 鯉イリ酒ワサビ」という記述があることです。
これを刺身の文献上の初出とする説もありますが、記念日は『康富記』の日付にちなんで制定されました。
おそらく、後世の人々にとって、康富の日記の方が詳細で鮮明に刺身の姿を伝えていたからでしょう。
刺身の日にまつわる豆知識
刺身と「造り」の違い
関東では「刺身」という呼び方が一般的ですが、関西では「造り」や「お造り」と呼ぶことが多いです。これ
は「刺す」という言葉を避けるためとされ、京都の料亭文化においては、より上品な響きを持たせるために使われてきました。
切り方の文化差
関東ではやや厚めに切る「平作り」が主流。
一方、関西では魚の繊細な味を引き出すため、包丁を寝かせて薄く切る「そぎ作り」や、フグの「薄造り」が有名です。
盛り付けの美意識
室町時代から現代まで、日本料理の盛り付けは「目で食べる」美学が重視されてきました。
魚のヒレや皮、さらには季節の葉や花を添えることで、単なる食事以上の価値が生まれます。
海外でのSashimi人気
現代では「Sashimi」として海外でも通じる言葉になり、寿司と並び日本食文化を象徴する存在です。
ただし海外ではサーモンやツナが人気で、日本のように白身魚の繊細な味わいを楽しむ文化はまだ発展途上です。
刺身の日と関わりの深い人物・組織
この記念日における最大の功労者は、中原康富です。
彼は政治家というより「歴史の記録者」としての役割が大きく、食文化や庶民生活にまで言及した日記は、歴史学的にも貴重な資料です。
もう一つ名前を挙げるなら、『鈴鹿家記』を残した鈴鹿家。
京都吉田神社の神官であった鈴鹿家は、祭礼や日々の食事など、文化と生活の記録を長く残しました。
その中に「刺身」と思われる料理の記述があったことは、日本食文化の古さを証明する重要な手がかりです。
刺身の日に関するよくある質問
Q1. 刺身の日は誰が制定したのですか?
A. 正式な制定者は不明ですが、『康富記』に記された日付にちなみ、書籍や食文化関係者の間で広まりました。
Q2. 刺身の日に特別なイベントはありますか?
A. 全国的な大規模イベントはありませんが、飲食店でのフェアや割引、SNSでの「#刺身の日」投稿などが見られます。
Q3. 家で刺身をもっと美味しく食べるコツは?
A. 食べる直前まで冷やす、包丁はよく研ぐ、切り方は魚種ごとに変える(マグロは平作り、ヒラメはそぎ作り)と、風味がぐっと引き立ちます。
刺身の日のまとめ
8月15日の「刺身の日」は、単なるグルメの記念日ではなく、日本人の食文化の歴史そのものを映す日です。
室町時代の公家・中原康富が日記に残した一文から、刺身の呼び名や由来、盛り付けの美学が浮かび上がります。
ヒレを刺すという知恵や、言葉選びにまで配慮する感性は、日本人が食に寄せる想いの深さを物語っています。
この日をきっかけに、ただ食べるだけでなく、刺身の歴史や地域性、盛り付けの美しさにも目を向けてみてはいかがでしょうか。
きっと、いつもの刺身が、何倍も味わい深く感じられるはずです。
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