2024年に向けて、日本では外食産業での食品ロス削減に向けた大きな取り組みが始まっています。
その一環として、消費者が食べ残しを持ち帰るためのガイドラインの策定が進められています。
このガイドラインは、飲食店での食べ残しを「衛生的に」「安全に」持ち帰る方法を提示し、食品ロス問題に対処するための新たな一手となる予定です。
今回は、このガイドラインがなぜ重要で、どのように私たちの生活に影響を与えるのか、そして消費者や飲食店がどのように関わるのかを詳しく見ていきましょう。
日本の食品ロス問題：なぜ今行動が必要なのか？
まず、食品ロスとは何か、その深刻さについて改めて考えてみましょう。
食品ロスとは、まだ食べられるにも関わらず捨てられてしまう食品のことを指します。
これは、食材の過剰発注、消費者の食べ残し、販売期限が迫った商品の廃棄など、多くの場面で発生します。
日本では2022年度に推定472万トンもの食品が捨てられました。
これは一日当たり、約1,300トンの食品が無駄になっている計算です。
食料自給率が低く、多くの食品を輸入に頼る日本において、この現状は持続不可能なものです。
特に外食産業では、注文された料理の食べ残しが大量に廃棄されています。
また、食品ロスは環境にも大きな負担を与えます。
食料を生産する過程で大量のエネルギーや水が使用されており、これが廃棄されることで二酸化炭素の排出量も増加します。
国際的な取り組みの一環として、国連が掲げる持続可能な開発目標（SDGs）でも、「食品ロスを削減すること」が重要なテーマとなっています。
そのため、日本国内でもこの問題に真剣に取り組む必要があるのです。
ガイドライン策定の背景：持ち帰り文化の進化
ここで注目したいのが、食べ残しの持ち帰り文化です。
海外では、食べきれなかった料理を持ち帰ることが一般的であり、「ドギーバッグ」という言葉も広く知られています。
一方で、日本では「持ち帰り」はあまり浸透しておらず、特に衛生面の懸念が大きな理由として挙げられてきました。
食べ物を持ち帰ることが奨励されていなかったため、食べ残しが廃棄されるケースが多く見られました。
しかし、近年の食品ロス問題の深刻化を受け、消費者意識も徐々に変わりつつあります。
厚生労働省の検討会では、持ち帰りが可能な食品として「十分に加熱された食品」が挙げられており、これにはパンやフライドチキン、焼き物などの中心部が75度以上に達した食品が含まれます。
このガイドラインでは、持ち帰りに際しての責任は消費者にあり、飲食店は食品が持ち帰り可能かどうかを判断する役割を担います。
この新しい取り組みは、食品を持ち帰ることで「無駄にせずに済む」という意識を消費者に広め、日常的な外食の場面で食品ロスを大幅に削減することを目指しています。
持ち帰りのリスクと安全性：注意点を押さえよう
ガイドライン案では、「十分に加熱された食品」が持ち帰り可能であるとされています。
しかし、持ち帰る際にはいくつかのリスクが伴います。
まず、温度管理です。
食品が適切な温度で保たれていないと、細菌が繁殖しやすくなり、食中毒の原因となる可能性があります。
特に夏場や長時間の移動が伴う場合には、保冷剤などを使用して食品を冷やす必要があります。
ガイドラインでは、飲食店側が保冷剤を提供することも検討されており、これにより消費者は安全に食品を持ち帰ることができます。
また、サラダや刺身といった生ものや、中心部まで加熱されていない食品については持ち帰りが禁止されています。
これは、持ち帰り後に適切な温度管理が難しいため、食中毒のリスクを避けるための措置です。
消費者としては、持ち帰りの際に食品の温度や保管方法に十分注意し、食べる前には再度加熱するなど、適切な処理を行うことが求められます。
外食産業の挑戦と可能性：新たな価値観の創造
このガイドラインの策定は、外食産業にも新たな課題と可能性をもたらします。
飲食店にとって、食べ残しを減らすことはコスト削減にも直結します。
食材の無駄を減らすことで、仕入れコストが削減されるだけでなく、廃棄物の処理費用も軽減されます。
さらに、食品ロス削減に積極的に取り組む姿勢は、エコ意識の高い消費者にアピールするポイントにもなります。
最近では、環境に配慮した企業活動が注目されており、「サステナブルな経営」を打ち出すことで、企業イメージの向上にもつながるでしょう。
一方で、持ち帰りの際の食品安全の確保は飲食店にとって大きな責任となります。
適切な判断基準を持ち、衛生管理を徹底することが求められますが、これは消費者の信頼を得るための重要な要素でもあります。
消費者に対しても、店側が安全な食品を提供しているという安心感を与えることで、持ち帰り文化の普及が促進されると考えられます。
消費者としてできること：日常での食品ロス削減
このガイドラインの実施により、消費者自身も「食品ロス削減」に対して積極的に行動できるようになります。
外食時には、自分の食べられる分だけを注文し、もし食べきれなかった場合は、今回のガイドラインに基づいて安全に持ち帰ることが可能です。
また、持ち帰った食品を再加熱して次の日の食事に活用するなど、工夫次第で無駄を減らすことができます。
自宅でも、購入した食材を無駄にしない工夫が必要です。
例えば、冷蔵庫の中身をきちんと把握し、余分な買い物を控えたり、食材を使い切るレシピを試してみることも効果的です。
政府が提供する「食品ロス削減」アプリや、地域のフードシェアリングサービスを活用するのも良い方法です。
こうした日常の小さな行動が、社会全体の食品ロス削減に大きく寄与します。
今後の展望：ガイドラインの成果と持続可能な未来
ガイドラインの実施が始まれば、消費者と外食産業が協力して食品ロスを減らす新たな文化が形成されることが期待されます。
飲食店の側では、メニューの見直しや持ち帰り可能な食品の拡充といった取り組みが進むでしょう。
また、消費者の意識も変わり、食べ残しを出さないような行動が広まると予想されます。
他国の事例では、フランスが「食べ物を無駄にしない」文化を醸成し、法律でスーパーマーケットに未販売食品を寄付する義務を課すなど、成功を収めています。
日本でも、このガイドラインの策定が進む中で、同様の成功例を目指すことができるかもしれません。
まとめ：ガイドラインを通じて未来を変える
今回のガイドラインは、食品ロス問題を解決するための重要なステップです。
飲食店と消費者が協力し、持ち帰りを通じて無駄をなくすことで、私たち一人ひとりが持続可能な未来に貢献できます。
安全で衛生的な食事の持ち帰りが普及すれば、食品ロスの削減はもちろん、外食産業全体のエコ意識も高まることでしょう。
私たち消費者が積極的に取り組むことで、より良い未来を築くことができるのです。
