突然、自分の証券口座で知らない株が取引されていたら、あなたはどうしますか?
最近、日本証券業協会(以下、日証協)が証券会社と連携して「不正アクセスによる証券口座の乗っ取り」に対する顧客補償の方針を検討していると発表しました。
株式投資をしている方にとっては他人事ではなく、現実に起きている重大な問題です。
結論から言うと、今後は一定の条件を満たせば補償される可能性が高まる見込みです。
この記事では、
- どんな条件を満たせば補償されるのか?
- なぜ今まで補償されなかったのか?
- 補償されないケースは?
- 乗っ取りを防ぐ具体的な対策
といった気になるポイントを、わかりやすく解説します。
なぜ今、証券口座の「補償」が検討されているのか?
2025年3月以降、日本国内で証券口座が不正ログインによって乗っ取られ、勝手に株を売買されるという事件が多数発生しています。
金融庁の発表によると、被害件数は6社で1454件、被害総額は954億円にも達しています。
中には、政府が推奨していた「新NISA口座」も含まれており、国民の信頼を大きく損ねかねない事態にまで発展しました。
これまで補償されなかった理由
証券会社の利用規約(約款)には、「顧客側に過失がある場合は補償しない」と明記されており、仮に乗っ取り被害が起きても、
- IDやパスワードを管理できていなかった
- 不審なメールを開いてしまった
などの理由で、補償の対象外とされてきました。
さらに、金融商品取引法では**「損失補填」が原則禁止**されているため、法的にも補償が難しいとされていたのです。
それでも「補償検討」に動いた理由
今回、金融庁は「第三者による不正取引は、損失補填の規制対象外」との見解を示しました。これにより、法律上の制約が緩和され、補償に向けた議論が一気に進展。
また、政府から証券業界に対して強い要請があったこともあり、日証協が主導して「業界としての補償基準」づくりに乗り出したわけです。
補償される条件とは?
現在検討されている補償方針では、以下のような条件がポイントとなりそうです。
● 多要素認証を設定していたか?
- ID・パスワードに加え、SMS認証や生体認証などの多要素認証を導入していた場合、補償されやすいと見られています。
● 速やかに被害届を提出したか?
- 証券会社や警察への速やかな連絡・証拠提出も補償判断の材料になります。
● 顧客側に重大な過失がなかったか?
- 例えば、ID・パスワードをメモに書いてパソコン横に貼っていたなど、不適切な管理があれば、補償されない可能性もあります。
補償されない可能性があるケース
今後、補償が制度化されるとしても、全件一律に補償されるわけではありません。
以下のようなケースでは、補償対象外になる可能性が高いです。
- パスワードを使い回していた
- 不審なメールに自ら情報を入力してしまった(フィッシング詐欺)
- OSやブラウザが古く、セキュリティが不十分だった
乗っ取りの手口:ウイルス「インフォスティーラー」に注意!
最近増加しているのが、「インフォスティーラー」というウイルスによる情報盗難です。
インフォスティーラーとは?
- 一瞬で証券口座情報やパスワードを盗み取るウイルス
- 感染後すぐに自分を削除して証拠を消す
- Google Chromeなどに保存されたID・パスワードも標的に
感染のきっかけは「I’m not a Robot」などの偽セキュリティ画面にあり、これをクリックすると自動でウイルスが動作します。
今すぐできる対策3選
被害に遭ってからでは遅いため、日常から以下の対策を実践することが重要です。
1. 多要素認証を必ず設定する
- パスワード+SMS認証など、最低2段階以上のログイン認証を行う。
2. パスワード管理ソフトを導入する
- ブラウザに保存せず、暗号化された専用管理ツールを使う。
3. OS・ブラウザは常に最新に保つ
- セキュリティ更新が行われるたびに即時アップデートする。
まとめ:補償されるためには「自分を守る努力」が不可欠
証券口座が不正に乗っ取られる事件は、今や他人事ではありません。
日証協の方針によって、被害に遭ったとしても補償される道は開かれつつありますが、「補償される条件」を満たさなければ、損失は自己責任になる可能性もあります。
今一度、自分のセキュリティ対策を見直し、被害に備えましょう。
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