法の日(10月1日 記念日)はどんな日?
✅ 昭和3年(1928年)10月1日に陪審法が施行され、これを記念して司法記念日が始まった日です。
✅ 1960年(昭和35年)に法務省が「法の日」と定め、法の尊重と人権擁護を訴える日とした日です。
✅ 毎年10月1日~7日を「法の日週間」として、裁判所見学・講演・法律相談などのイベントが全国で行われます。
もし「法」があなたのそばにやってきたら
あなたがふと「契約書をよく読まなかった」と悔やんだ瞬間はないでしょうか。
あるいは、ネット通販で予期せぬトラブルに巻き込まれた時、「法律って何だろう?」としばし頭をよぎることがあるかもしれません。
そんな時、もしあなたが法廷の傍聴席に座り、裁判官・弁護士・証人・傍聴人たちが議論する空気を直接感じられたなら。
静まり返った法廷の空気、判決が読み上げられる緊張感、そして「法が動く現場」を目の当たりにすれば、「法律」が抽象的なものから、あなたの暮らしの一部へと変わるはずです。
実は、10月1日はその「橋渡し役」のような日です。
「法の日」として、普段は遠く感じられる法や司法制度を、できるだけ身近に感じてもらう機会を全国で設ける日です。
この記念日には、歴史的背景と制度の物語があります。
また、見学会や法律相談、展示やワークショップといった実践の場も多数用意されています。
そして最も大切なのは、あなた自身が“法を自分ごとにする”チャンスがそこにあることです。
ここでは、法の日の成り立ち、豆知識、関わる団体・制度、イベントの魅力、読者としてできることまで丁寧に紹介します。
法の日の歴史と由来 ―─ 法と参加の歩み
法の日の根底には、陪審制度という「国民参加の司法」の試みと、その記憶を未来へつなごうという意志が込められています。
1923年(大正12年)に公布された陪審法は、当時の日本社会に「国民も裁判にかかわる可能性」を導入しようとした試みでした。
ただし、すべてを即時施行したわけではなく、運用可能な範囲から段階的に施行されました。
そして昭和3年(1928年)10月1日、ついに一部条文が施行され、「陪審法の日」として制度のスタートが切られたのです。
その翌年、1929年からこの日を「司法記念日」と定め、国民に法意識を促す機会としました。
しかし、第二次世界大戦の時代が近づくにつれ、司法制度の維持が困難になり、1943年(昭和18年)4月1日には陪審法の実施が停止されました。
制度そのものは長く休止状態となりますが、「司法記念日」という形で記憶され続けました。
戦後、日本社会では民主主義・法治主義が再構築されていきます。
1959年(昭和34年)には、裁判所・検察庁・弁護士会による協議がなされ、10月1日を法を尊重する日とする構想が提案されました。
そして1960年(昭和35年)に閣議了解により、この日を「法の日」と正式に定めるに至りました。
このように、名目上は陪審法を機軸とした日から、より包括的な「法と人権を尊ぶ日」へと変容を遂げてきたのです。
たとえば、施行停止後も司法界・法曹界には陪審制度復活論が断続的に存在しました。
さらに、2009年からは「裁判員制度」が導入され、国民が刑事裁判に参加する仕組みが実際に運用されるようになったことも、法の日とつながる歴史的流れです。
法の日は、法律制度の変遷とともに「国民と法との関係性」を問い直す記念日です。
ただの記念日ではなく、歴史と現代と未来を結ぶ節目です。
法の日週間と見どころ ―─ 体験・知識・参加の三層構造
法の日には「見る/学ぶ/参加する」という三重の体験要素が重なり合うことで、単なる記念日を越えた深い価値を生み出します。
- 見る体験:法廷見学や模型展示といった実際の現場を視覚で感じられる機会
- 学ぶ体験:展示、パネル、講演、資料で制度・歴史を理解できる仕組み
- 参加体験:法律相談、討論会、ワークショップなど、双方向で関われる場
これらが重なることで、記念日は“形だけで終わらない時間”になります。
見る体験
最高裁判所では、大法廷や控訴棟などの法廷見学会が行われることがあります。
傍聴席に座り、判事席を間近で見ると、その重厚さ・格式を肌で感じられます。また、子ども向けに模型の法廷を使って体験型展示を置く裁判所もあります。
学ぶ体験
法務省が毎年主催する「法の日フェスタ」では、法律の歴史、制度の仕組み、著名な裁判例などのパネル展示があります。
地域の法務局や図書館では、法制度や消費者法、人権に関する展示や講演が並びます。
最近では、電子法令検索や動画配信で制度解説を行う自治体もあります。
参加体験
弁護士会では法の日週間に、無料法律相談を実施します。
市民が弁護士に質問できる出張相談ブースを街角に設けることもあります。
公開討論、パネルディスカッション、模擬裁判ワークショップなど、市民参加型のプログラムも多く見られます。
この三層を揃えることで、法の日は「見るだけ」「聞くだけ」の記念日ではなく、あなた自身が法と関われる日になります。
関係する団体・制度・人物 ―─ 法の日を支える人たち
法の日を支えているのは、法務省・裁判所・検察庁・弁護士会といった司法に関わる多くの機関と、そこで働く人々のたゆまぬ努力です。
法務省は、記念日の設計と普及を担う中心的存在です。全国規模の広報活動やイベントを企画し、法教育や人権の大切さを伝える役割も果たしています。
裁判所は、法を「見て感じられる場所」として、見学会や展示を通じて市民に法廷の空気を体験させてくれます。
検察庁は、事件の捜査や起訴の仕組みを知ってもらう展示や講演を通じて、司法の一端をわかりやすく紹介しています。
そして弁護士会は、法律相談やワークショップを開催し、市民と法の距離を縮める大切な橋渡し役を担っています。
かつて陪審法が議論された時代から、裁判員制度が導入された現在まで、法を身近にする取り組みは続いてきました。
法の日は、制度そのものだけでなく、こうした人々の熱意と工夫に支えられている記念日なのです。
法の日よくある質問とその答え
Q1:陪審法は今も有効なの?
現在、陪審法は法的には廃止されていませんが、実際には使われていません。
1943年4月1日に「陪審法の施行停止法」が施行され、制度の運用が完全に止まったためです。その後、陪審員が裁判に関わるケースはほとんどなく、名目上存在するのみの状態が続いています。
ただし、当時の「市民が司法に参加する」という理念は、現在の裁判員制度に受け継がれています。
法の日は、その理念を大切にし、今に伝える意味を持つ記念日でもあるのです。
Q2:なぜ10月1日が法の日なの?
10月1日が法の日とされているのは、1928年に陪審法が施行された日だからです。
この日をきっかけに、翌1929年からは「司法記念日」として記念されるようになりました。
その後、法の重要性や人権尊重の意識を高めるため、1960年に「法の日」として正式に制定されました。
制度の始まりの日を記念日にするのは自然な流れであり、歴史的にも意味のある選択だったといえます。
こうして10月1日は、法律の役割と意義を再確認する象徴的な日として受け継がれているのです。
Q3:行事には誰でも参加できる?
法の日に行われる多くの行事は、誰でも自由に参加できるように開かれています。
目的は、法律や司法制度をより身近に感じてもらうことにあり、国民に向けた啓発活動として実施されているためです。
裁判所の見学会やパネル展示、法務省のイベント、無料の法律相談会、講演会などが全国各地で行われています。
これらのイベントは多くが無料で、事前申し込みが不要なものもあります。
気になる方は、お住まいの地域の裁判所や法務局、弁護士会などの案内を確認して、気軽に足を運んでみてください。
Q4:法の日って私にとって何になるの?
法の日は、ふだん意識することの少ない「法律」を、ぐっと身近に感じることができるきっかけになります。
裁判所の見学や講演を通して、法の仕組みを知ることができたり、無料の法律相談で自分の悩みを専門家に相談できたりするのです。
たとえば、契約書の内容がわからない、トラブルの対応に迷っている、そんなときにも「法ってどう役立つのかな?」と考えるきっかけになります。
法の日を通じて、法律は難しいものでも、遠い存在でもなく、自分の暮らしを支えてくれる味方であると感じられるはずです。
あなたにできること・未来を育む視点
法の日をきっかけに、自分の暮らしと「法」のつながりを見つめ直してみませんか。
この記念日を、学ぶ日、体験する日、そして自分に問いかける日にすることで、日常の中にある法律の存在を意識できるようになります。
たとえば、気になる法律テーマをひとつ選んで調べてみるのも良い方法です。
消費者トラブル、個人情報保護、SNSの使い方、交通ルールなど、どれも私たちの生活に密接に関わっています。
10月1日から始まる「法の日週間」には、法務局や裁判所でさまざまな行事が行われます。
近くで開催されている見学会や法律相談に参加することで、法がぐっと身近に感じられるはずです。
また、身の回りの人と「もしこの契約に問題があったらどうする?」といった会話をするだけでも、法への理解が深まります。
家庭や職場、学校など、どこでも法について考える機会はつくれます。
これからの社会では、裁判員制度の進化や、子ども向けの法教育、オンライン法廷などのデジタル化がますます進んでいくでしょう。
そして、世界では法の支配を尊重する「World Rule of Law Day」も広まりつつあります。
法の日は、未来の司法や教育、社会づくりに向けて、私たち一人ひとりができることを考える大切な出発点でもあるのです。
まとめ:法の日を、あなたの“法との対話日”に
法の日(10月1日)は、1928年の陪審法施行をきっかけに始まり、やがて司法記念日、そして現在の「法を尊重し、人権を守る日」へと受け継がれてきた記念日です。
この日を中心に、裁判所の見学、講演会、パネル展示、無料法律相談、ワークショップなど、全国でさまざまなイベントが開催されます。
大切なのは、単に法律の歴史や制度を「知る」にとどまらず、実際に「見る」「学ぶ」「参加する」ことによって、法を自分の暮らしと結びつけることです。
身近な契約やトラブル、権利や義務について改めて考えてみる。
法に触れるイベントに足を運び、専門家の話を聞いてみる。
家族や友人と「法律って意外と面白いよね」と話すだけでも、あなたの中の意識は変わり始めます。
法の日は、法律を遠い存在ではなく、自分の生活に根ざした「対話の相手」として捉え直す絶好の機会です。
この一日を、未来へ続く新しい一歩にしてみてはいかがでしょうか。