ハイビジョンの日 11月25日はどんな日?
✅ アナログハイビジョンの走査線が1,125本あることにちなんで制定された記念日です。
✅ 映像の縦横比が16:9であることから、9月16日にも「ハイビジョンの日」がある珍しい記念日です。
✅ 制定したのは郵政省(現・総務省)と日本放送協会(NHK)の2団体です。
“テレビって、こんなに美しかったんだ。”
そう思わせてくれた初めての体験を、あなたは覚えていますか?
家族で囲んだリビングのテレビ。
歌番組のステージがまるで目の前に広がっているようで、アイドルの衣装の細かな刺繍まで見えて。
まるで世界が変わったかのような映像の鮮明さ。
それを可能にしたのが「ハイビジョン」という革命的な映像技術です。
そしてこの進化を記念する特別な日が「ハイビジョンの日(11月25日)」です。
この日には、私たちの目に映る世界を、より美しく、よりリアルに変えてくれた技術の誕生と、それに携わった技術者たちへの感謝が込められています。
このブログでは、そんな「ハイビジョンの日」がなぜ11月25日に制定されたのか、その舞台裏と技術の魅力、そして知れば誰かに話したくなる“映像の豆知識”まで、たっぷりとご紹介します。
映像が心を動かす理由。
それは、「ただ鮮明だから」では語りきれない、深い物語があるからです。
なぜ11月25日?ハイビジョンの日の由来を徹底解説
「ハイビジョンの日」と聞いて、なぜ11月25日?と疑問に思う人もいるでしょう。
この日が選ばれた理由は、ハイビジョン放送に用いられた“ある数字”に深く関係しています。
その数字とは「1,125」。
これは、アナログハイビジョン放送における走査線の本数です。
走査線とは、テレビ画面を構成する水平の線のことで、これが多いほど画質が高くなります。
従来のアナログ放送(NTSC方式)では525本。
しかしハイビジョンでは、この2倍以上の1,125本。
つまり、画質も解像度も格段に向上したということなのです。
そしてこの「1,125」を11月25日(11/25)と語呂合わせし、1987年、当時の郵政省(現・総務省)とNHKが「ハイビジョンの日」として正式に制定しました。
技術の数字をそのまま日付にするという、シンプルでありながら非常に意味のある命名。
しかもこれだけではありません。
実は、「ハイビジョンの日」はもう1日存在します。
それが、9月16日。
この日は、ハイビジョンテレビの画面比率が「16:9」であることから、通商産業省(現・経済産業省)によって定められた、もう一つの「ハイビジョンの日」なのです。
つまりハイビジョンには、「解像度の高さ」と「映像の形状」という、2つの技術的特長を記念する日が、それぞれ設けられているのです。
一つの技術に、二つの記念日。
それほどまでに、ハイビジョンは私たちの映像体験に革命をもたらしたのです。
そもそもハイビジョンとは?映像革命の技術をやさしく解説
ハイビジョンとは、日本で独自に開発された高精細度テレビ放送の愛称です。
英語では「High Definition Television(HDTV)」と呼ばれ、日本では特に「Hi-Vision(ハイビジョン)」というブランド名で知られるようになりました。
この「Hi-Vision」という名称は、実はNHKエンジニアリングサービスという財団法人が商標登録している、れっきとしたブランド名なのです。
技術的な最大の特徴は、やはりその「走査線の多さ」と「画面比率」。
走査線の数が1,125本と従来のテレビよりも倍以上あるため、画面がより精密に、より滑らかに描かれます。
また、画面の縦横比は「16:9」。
これは人間の視野に近いバランスとされており、4:3の従来型テレビに比べて、映画やスポーツ観戦などでより臨場感ある映像が楽しめるのです。
つまり、ハイビジョンは単なる「高画質」ではなく、「人間の視覚体験をより自然に、心地よくする」ために作られた技術だったのです。
さらに面白いのは、その開発において、初めから「世界標準」を視野に入れていたこと。
NHKは1964年の東京オリンピックの技術的成功を受け、放送技術研究所でハイビジョンの研究を本格的にスタート。
1972年には、国際機関であるITU-R(国際電気通信連合)に対して規格提案を行い、国際標準化を目指して動き出したのです。
この挑戦が、やがて世界中の映像技術の基準を塗り替えるきっかけとなるのです。
NHKと郵政省が導いた“映像革命”の舞台裏
「ハイビジョンの日」を制定した2つの組織。
それは、郵政省(現在の総務省)と、日本放送協会、すなわちNHKです。
この二者が果たした役割は、まさに日本の映像革命を牽引した立役者と言える存在です。
まず、NHK。
技術研究所(NHK技研)を中心に、1960年代から始まったハイビジョン開発は、最初は夢物語に近いものでした。
テレビの画質を劇的に上げるためには、放送機材、受像機、さらには送信インフラそのものを一新しなければならない。
膨大な予算と技術的課題。
それでもNHKは、「未来のテレビ」というビジョンを信じ、粘り強く研究を続けました。
その結果、1976年には世界初のハイビジョンモニター(30インチ)を完成。
これはまさに、日本の技術力と情熱の結晶でした。
一方、郵政省はというと、放送行政をつかさどる役所として、技術革新を社会実装するための政策的支援を行いました。
研究予算の配分、法的整備、国際交渉など、技術を社会に届ける「道」をつくったのが郵政省なのです。
技術者と行政が手を取り合って、未来の映像を築いた。
このタッグは、日本が世界に先駆けてハイビジョンを実用化するための“奇跡的な連携”だったとも言えるでしょう。
ハイビジョンの日にまつわるよくある質問
Q1:なぜ9月16日にもハイビジョンの日があるの?
A:9月16日は画面比率「16:9」にちなんで制定されました。制定したのは通商産業省(現・経済産業省)で、映像の“形”を記念しています。11月25日は解像度の“数字”を記念した日なので、由来が異なります。
Q2:現在のテレビ放送でもハイビジョンは使われている?
A:はい。現在も地上デジタル放送の多くがハイビジョン(HD)画質で放送されています。ただし、最近では4K・8Kといった更に高精細な技術が主流になりつつあります。
Q3:ハイビジョンとフルHD、4Kの違いって?
A:ハイビジョン(HD)は720pまたは1,080iの解像度、フルHDは1,080pでより滑らかな映像。4Kはその約4倍、8Kは16倍の画素数を持つ超高精細映像です。
ハイビジョンの日(11月25日)は、未来の映像を語る入り口
「ハイビジョンの日(11月25日)」は、ただの技術記念日ではありません。
それは、私たちが当たり前に感じている「映像の美しさ」の裏に、どれだけの挑戦と情熱があったかを思い出させてくれる日です。
テレビの前で家族と一緒に笑い、泣き、驚き。
その一つひとつの感情の裏側には、見えないところで尽力してきた技術者たちの努力があるのです。
私たちは今、4K・8K、さらにはVRやARといった新たな映像世界へと歩み始めています。
しかし、その原点にあるのは、間違いなく「ハイビジョン」なのです。
だからこそ、11月25日という日は、ただ懐かしむだけでなく、「映像が心に残る理由」を再確認する日でもあるのです。
来年、家族で見る紅白歌合戦。
その鮮明な映像の裏に、この記念日を思い出してみてはいかがでしょうか。

