1964年7月24日。それは、漫画という表現が「子どもだけのもの」から「大人も没頭する文化」へと飛躍した日。
この日、日本の漫画史に強烈なインパクトを残す雑誌――『月刊漫画ガロ』が創刊されました。
創刊したのは、青林堂の創業者・長井勝一。
そして、その誌面を飾ったのは、白土三平の『カムイ伝』、水木しげるの『鬼太郎夜話』、つげ義春の『ねじ式』など。
それらは、当時の漫画の常識を覆す“劇画”と呼ばれるジャンルを提示しました。
緻密で、重厚で、どこか切なくて――
そんな「生きた人間の物語」を描いた作品たちが、多くの読者の心を震わせたのです。
この偉大な始まりを記念し、7月24日は「劇画の日」とされています。
この記事では、
「劇画って何?」
「なぜこの日が記念日になったの?」
「どんな人が関わったの?」
そんな疑問に答えながら、“劇画”という文化が持つ深みと、現代における価値をたっぷりとご紹介します。
読んだ後には、きっと「今すぐ1冊、ガロを読んでみたい」と感じてもらえるはずです。
劇画の日(7月24日 記念日)はどんな日?
✅1964年、伝説の雑誌『ガロ』創刊日
✅劇画という大人向け漫画ジャンルの転機
✅多くの鬼才・異才が誕生した文化的節目
劇画の日の由来は?『ガロ』創刊が文化を変えた瞬間
1964年7月24日、青林堂が発行した月刊誌『ガロ』。
その創刊は、日本の漫画にとって一大事件でした。
当時、漫画といえば「子どもの読むもの」とされ、大人が楽しむにはどこか気が引ける文化でした。そんな常識を覆したのが『ガロ』です。
創刊号で大きく取り上げられたのは、白土三平の『カムイ伝』。
江戸時代の被差別民の視点を通して、階級社会の矛盾を描くというテーマは、従来の漫画とはまるで異なるもの。
読者層は大学生やインテリ層に広がり、たちまち“思想を持つ漫画雑誌”として文化的アイコンとなっていきました。
しかも、『ガロ』は商業的な成功を求めず、純粋に作家の個性と表現を尊重する編集方針を貫きました。
だからこそ、つげ義春や水木しげるといった異才が自由に作品を発表でき、そのスタイルが「ガロ系」として今日まで語り継がれているのです。
7月24日は、そんな“自由な表現の聖地”が産声を上げた日。
今も語られる伝説の雑誌『ガロ』の創刊記念日として、劇画の日に定められています。
劇画の日に知っておきたい豆知識!劇画とは何か?
劇画とは、いわば「映画のような漫画」です。
1950年代後半、「漫画じゃない、もっとリアルでシリアスな物語を描きたい」――
そんな願いから、漫画家・辰巳ヨシヒロが生み出した造語が“劇画”です。
彼は、同じ志を持つ作家たちとともに「劇画工房」を1959年に結成。
この時代、彼らの舞台は貸本漫画と呼ばれる、図書館のように漫画を貸し出す仕組みの場でした。
その中で彼らは、
・暴力や犯罪を描いたハードボイルドな物語
・社会の矛盾や人間の苦悩に迫る心理劇
・静かで陰影のある絵柄
――といった、従来の漫画にない手法で勝負します。
特に辰巳ヨシヒロや、後に『ゴルゴ13』を手掛けたさいとう・たかをは、劇画の旗手として知られています。
劇画の特徴を一言でいえば、「大人のための漫画」。
そこには子どもにわかりやすい笑いや冒険だけでなく、裏切り、孤独、権力、希望といった“人生の裏側”が詰まっているのです。
劇画の日と関わる人物・団体とは?文化を支えた英雄たち
長井勝一(青林堂創業者)
『ガロ』を創刊した人物にして、劇画文化の黒幕とも言える存在。
「作家の自主性を最優先する」編集方針を掲げ、作家たちの自由な表現の場を提供し続けました。
白土三平
社会派劇画の先駆け。『カムイ伝』は、劇画を“思想を伝える表現”へと高めた名作です。
水木しげる
『鬼太郎夜話』で登場し、後に『ゲゲゲの鬼太郎』で国民的存在に。
戦争体験を基にした作品も多く、劇画に人間の深みを与えた人物。
つげ義春
幻想的で不条理、しかしどこか胸に刺さる作風で「ガロ系作家」として今なお人気。
『ねじ式』『沼』などの代表作は、一度読むと忘れられません。
青林工藝舎と『アックス(AX)』
『ガロ』は長井の死後、1997年に休刊となりますが、1998年には精神を引き継いだ『アックス』が創刊。
青林堂の意思を継ぎ、今なお劇画的作風の作家たちが作品を発表し続けています。
劇画の日に気になるQ&A
Q1. 劇画って今も読めるの?
A1. はい!復刊ドットコムや電子書籍、古書店などで『ガロ』や劇画の名作を手に入れることができます。
Q2. 子どもには難しい?
A2. 難しい部分もありますが、中高生でも読みごたえを感じられる作品も多く、教育的価値も高いです。
Q3. 劇画の名作を1冊読むなら?
A3. 初心者には、つげ義春の『ねじ式』や、さいとう・たかをの『ゴルゴ13』がオススメです。
劇画の日(7月24日 記念日)まとめ:文化の自由を祝う一日
劇画の日は、ただの創刊記念日ではありません。
それは、“漫画は子どものもの”という固定観念を打ち破った象徴の日。
作家たちが恐れずに自分の表現を追求し、読者たちが「自分の人生」に重ねて物語を受け取る――
そんな、芸術としての漫画文化の始まりとも言える記念日です。
劇画の魅力は、読み手によって受け取り方が変わるところにあります。
この7月24日、「ちょっと1冊読んでみようかな」と感じたなら、それがもう、あなたが劇画の扉を叩いた証です。
漫画は娯楽であると同時に、立派な“文化”です。
劇画の日をきっかけに、その奥深さに触れてみませんか?
