元始祭（1月3日 旧祝祭日）はどんな日？
✅ 皇位の始まりを祝い、国家と皇室の繁栄を祈る宮中祭祀
✅ 明治時代に「皇室祭祀令」によって制定された新年最初の大祭
✅ 明治天皇、現在の天皇陛下、宮内庁が深く関わる伝統的な儀式
新年が始まり、多くの人が初詣に行き、家族でのんびりと過ごすお正月。
その三が日の最終日である1月3日には、実は日本の皇室にとって非常に重要な儀式が、静かにそして厳かに行われています。
その名は「元始祭（げんしさい）」。名前を初めて聞くという人も多いかもしれませんが、かつては国民の祝日にも指定されていた、由緒ある日です。
この日は、天皇陛下が自ら祭主として祈りを捧げ、皇位の始まり（元始）を祝う日。華やかなイベントではないものの、日本という国の根幹に関わる「始まりの日」なのです。
ここでは、元始祭の成り立ちや歴史、儀式の意味や関係する人物・団体まで、誰かに話したくなるような魅力的な内容でご紹介します。
元始祭（1月3日）の由来と意味は？その背景に迫る
元始祭とは、1908年（明治41年）に制定された「皇室祭祀令」により、皇室の年間祭祀の中でも最も格式の高い「大祭」として位置づけられた行事です。
この祭りは、国家や皇室にとっての「出発点」、つまり「元始」を祝い、その繁栄と平安を願うために行われるのです。
「元始」とは何か？
「元始」とは文字通り「始まりの元」、つまり物事の根本的な出発点を意味します。
元始祭における「元始」とは、単に1月の最初という意味ではなく、天皇という存在が皇位に就いた「始まり」を指します。
それは同時に、国家の始まり、日本の原点を祝うという意味も持っているのです。私たち国民にとっては、あまり馴染みのない言葉かもしれません。
しかし、皇室においては皇位が続いていく永続性を象徴する特別な日として、強い意味を持っています。
明治時代に制度化された背景
この儀式が正式に国の行事として位置づけられたのは、明治時代。
近代国家としての体制を整える中で、皇室の存在を国家の中心に据えるために、「皇室祭祀令」が制定されました。
この中で、「元始祭」は天皇自らが主宰する最重要の親祭の一つとされ、新年最初の大祭に指定されました。
年頭の始まりに天皇が国と皇室の安寧を祈る——。
これは象徴としての天皇の役割を具体的に示す儀式でもありました。
「親祭」としての特別な儀式
元始祭は、単なる神事ではありません。最大の特徴は、「親祭」であるということ。
つまり、天皇陛下ご自身が祭主として神前に立ち、祈りを捧げる儀式なのです。
これは非常に格式の高い儀式で、天皇の神聖性や皇位の正統性を表す重要な役割を担っています。場所は皇居内にある「宮中三殿（賢所・皇霊殿・神殿）」。
それぞれに、天照大神、歴代天皇・皇族の霊、八百万の神々が祀られています。
この三殿を巡るようにして行われる元始祭は、日本という国の“魂”に向き合う時間とも言えるのです。
元始祭（1月3日）の豆知識！知ればもっと深く理解できる
元始祭は、皇室の内側で粛々と行われる行事のため、一般にはほとんど知られていません。
しかし、その奥には日本文化や歴史の深い知恵が詰まっています。
ここでは思わず誰かに話したくなるような、元始祭に関する豆知識をご紹介します。
実は“祝日”だった元始祭
かつて「元始祭」は、国民の祝日として広く知られていました。
戦前の日本では、「祝祭日大祭日一覧」によって、国家的に重要な日が法令で定められており、元始祭もそのひとつ。
学校も官公庁も休みで、新聞にもその名が掲載されていました。
しかし、1947年に「皇室祭祀令」が廃止され、同時に祝日法も見直されたことで、祝祭日から除外されることになったのです。
「大祭」とは何か？
皇室の祭祀には、格式に応じて「大祭」「中祭」「小祭」という分類があります。
「大祭」は、特に重要とされる祭典で、天皇自らが親祭として行う場合が多く、その代表例が「新嘗祭」「神嘗祭」そしてこの「元始祭」です。
つまり元始祭は、年間を通じて最も重視される儀式のひとつなのです。
1月3日に設定された理由
なぜ1月3日なのか？
これは単純に「お正月の最後の日」だからではありません。
元日は国民全体で新年を祝う日、1月2日は書き初めや年賀の準備の日。
そして、1月3日は、天皇が国の未来を祈る日として象徴的に選ばれたのです。
この流れを見ると、昔のお正月がいかに「意味のある順序」で構成されていたかがわかります。
元始祭（1月3日）に関わる人物・団体とは？
ここでは、元始祭に直接・間接的に関わる人物や組織について詳しくご紹介します。
明治天皇の強い意志
元始祭が制度化された背景には、明治天皇の存在があります。
明治天皇は、近代日本を築く中で、皇室の存在を国家の根幹に据えることを強く意識していました。
その中で、「皇室祭祀令」を制定し、天皇の神聖性を示す儀式を国家行事として体系化しました。
元始祭は、その代表格とも言える祭祀であり、天皇が国の安寧を祈る象徴的な場とされたのです。
現在の天皇陛下と宮内庁の役割
現在の天皇陛下もまた、毎年1月3日、皇居内の宮中三殿で「元始祭」を執り行っています。
儀式の詳細は公開されていませんが、朝夕の2度にわたって行われ、陛下は御引直衣という祭服で臨まれるとされています。
その運営を担っているのが「宮内庁」です。
宮内庁は、皇室の行事を支える組織であり、元始祭を含む年間を通じた祭祀の企画・準備・進行を一手に引き受けています。
神職と祭官の協力
天皇陛下以外にも、祭祀には「掌典職」や「神職」が関与しています。
彼らは、宮中祭祀に必要な準備や作法、儀式の進行を担当する、いわば祭祀のプロフェッショナルです。
その知識と技術、そして伝統を継承する姿勢があってこそ、古代から連綿と続く皇室の儀式が現代に生きているのです。
元始祭（1月3日）に関するよくある質問
Q1：元始祭は現在も行われているの？
はい、現在も宮中で行われています。
祝日ではなくなったものの、皇室行事として途切れることなく続いており、天皇陛下が自ら親祭を執り行います。
Q2：元始祭は一般の人が見学できるの？
いいえ、宮中で非公開で行われるため、一般の方が見学したり参拝することはできません。
報道もほとんどされないため、非常に静かな行事となっています。
Q3：なぜ祝日から外されたのですか？
1947年、戦後のGHQによる占領政策の一環で「皇室祭祀令」が廃止され、政教分離の原則により、国家行事から外されました。
これにより、元始祭は祝日ではなくなりましたが、皇室行事としての重要性は変わっていません。
元始祭（1月3日 旧祝祭日）のまとめ
元始祭は、新年の幕開けに、天皇陛下が自らの手で皇位の始まりを祝い、国と皇室の未来を祈る、非常に格式高い儀式です。
かつては祝日として、国民全体がその存在を意識する日でもありました。
現在では一般に知られることは少ないですが、皇室では変わらず受け継がれ、日本の「始まり」に向き合う神聖な儀式として続いています。
元始祭を知ることは、日本の文化や精神を深く理解するきっかけになるでしょう。
静かで目立たない記念日ですが、その中には千年以上の重みと祈りが込められています。