日本人初飛行の日はどんな日？
✅ 1910年12月19日、徳川好敏が公式に日本初の飛行機飛行を成功させた歴史的な日
✅ 実は5日前に日野熊蔵も飛行していたが、軍の公式記録は12月19日の飛行とされた
✅ 徳川家の血筋・徳川好敏と、発明家・日野熊蔵が深く関わっている記念日
広い空を見上げて、「人が空を飛ぶなんて夢の話だ」と思っていた時代。そんな常識を打ち破ったのが、1910年の日本人による初の飛行機飛行でした。
それを実現させたのは、名門・徳川家の末裔である徳川好敏。そして、その5日前に「こっそり」飛んでいたもう一人の軍人、日野熊蔵。
彼らが操縦したのは、フランスから輸入された「アンリ・ファルマン式複葉機」。代々木の空を舞ったその瞬間、日本は夢の時代から飛翔の時代へと変わったのです。
今回は、「日本人初飛行の日（12月19日）」がどうして記念日となったのか。
誰がどんな思いで空に挑んだのか。その裏にあるエピソードや、現在とのつながりまで――
飛行機ファンはもちろん、歴史や記念日が好きな方も「へぇ！」と感じるような深堀り情報を、たっぷりお届けします。
「日本人初飛行の日」の由来とは？明治の空を切り裂いた勇気
「空を飛ぶ」――今でこそ当たり前の技術ですが、明治時代の人々にとってはまさにSFのような話。
そんな時代に、日本で初めての動力飛行に挑んだのが、陸軍軍人・徳川好敏でした。
時は1910年（明治43年）12月19日。場所は現在の東京都渋谷区、代々木公園にある広大な軍事訓練場「代々木錬兵場」。
この日、軍によって「飛行記録会」が公式に開催されました。
主役は二人の陸軍将校。
一人は、工兵大尉・徳川好敏。もう一人は、歩兵大尉・日野熊蔵。
彼らが操縦したのは、フランス製の「アンリ・ファルマン式複葉機」。この飛行機は、飛行距離・安定性ともに当時最先端の設計でした。
この記録会で、まず飛行したのは徳川好敏。飛行時間は4分、最高高度は70メートル、飛行距離は3000メートルに及びました。
続いて飛行した日野熊蔵も、見事な飛行に成功。これにより、日本における「初飛行」は公式にこの日とされ、記録に残ることとなったのです。
実は5日前にもう飛んでいた？「幻の初飛行」の真相
さて、ここで驚きの事実があります。「日本初の飛行」として公式に記録されたのは12月19日ですが、実はその5日前――
12月14日に、日野熊蔵がすでに飛行に成功していたのです。
ところが、この日には「公式の記録会」が予定されていませんでした。そのため、軍の報告書では「滑走中に余勢で誤って離陸した」という扱いにされてしまったのです。
飛行時間・高度・飛距離に関する記録も、非公式という理由で残されていません。まさに、「幻の初飛行」。
このような扱いとなった背景には、当時の軍の厳格な官僚主義が見え隠れします。公式の場でない飛行は、どんなに技術的に優れていても認めない――
その中で、12月19日の飛行は“公式な飛行会での成功”という点で評価されたのです。
徳川好敏とは？名門の血を継ぐ“空のパイオニア”
徳川好敏（とくがわ よしとし）は、1884年に生まれた陸軍軍人。彼のルーツは、あの徳川家。
江戸幕府を支えた御三卿の一つ「清水徳川家」の第8代当主であり、名門の血筋を持つ人物でした。
エリートの道を進みつつも、未知の分野である「空」に挑んだ彼の姿は、当時の人々にとって衝撃的だったに違いありません。
彼は日本陸軍において、飛行機導入の重要人物としてフランスへ派遣され、
現地で実際に操縦訓練を受けて帰国。
ただの名家の跡取りではなく、「行動する改革者」だったのです。
また、飛行以降も軍の中で航空技術の発展に尽力し、日本の空軍創設の礎を築きました。
日野熊蔵とは？天才発明家としても知られた異才
もう一人の立役者、日野熊蔵（ひの くまぞう）は、1878年生まれ。陸軍歩兵大尉でありながら、発明家としての顔も持つ異才でした。
彼もまたフランスで操縦訓練を受け、帰国後には徳川とともに航空隊の草創期を支えました。
実は日野は、その後も軍用車両の開発や兵器の設計など、多岐にわたる分野で活躍。新聞や雑誌では「天才発明家」と報じられるほどの注目を集めていたのです。
もし彼の飛行が公式記録に残っていれば、歴史は少し違っていたかもしれません。それでも、彼が残した足跡は決して小さくありませんでした。
代々木公園に残る「初飛行の地」とは？今も残る空への記憶
1974年（昭和49年）、代々木公園には一つの記念碑が建てられました。その名も「日本初飛行の地」。
碑のそばには、徳川好敏と日野熊蔵、2人の胸像が仲良く並んで設置されています。
そして2010年（平成22年）には、初飛行から100周年を記念する式典が開催され、航空ファンや歴史家たちが一堂に会しました。
何気なく通り過ぎる代々木公園の一角に、そんな歴史の瞬間が刻まれているのです。
ぜひ機会があれば訪れて、彼らが見上げた空を、あなたの目でも見てください。
「日本人初飛行の日」に関するよくある質問
Q1：誰が「日本人初飛行の日」と決めたの？
A：公式には国や団体が定めた法律的な記念日ではありませんが、航空関係者や歴史研究者の間で12月19日が「日本人初飛行の日」と広く認知されています。
Q2：飛行機はどこで手に入れたの？
A：フランスから輸入した「アンリ・ファルマン式複葉機」で、軍が正式に導入した機体でした。
Q3：今の日本の航空技術とどうつながっているの？
A：この初飛行がきっかけで航空技術への関心が高まり、後の戦闘機開発や民間航空、さらには宇宙開発へとつながる礎になりました。
「日本人初飛行の日」のまとめ：空を見上げた勇者たちを忘れない
12月19日は、ただの過去の記録ではありません。それは、「空を飛ぶ」という夢に、命がけで挑んだ人たちの物語が始まった日です。
徳川好敏の冷静な決断力。
日野熊蔵の情熱と技術力。
そして、その姿を見上げた無数の人々の希望――
日本の空は、この日の小さな勇気から大きく羽ばたきました。ドローンが空を舞い、ロケットが宇宙に届く今、もう一度この記念日を思い出してみてください。
代々木公園の空の下には、未来を夢見た男たちの鼓動が今も息づいています。
