三億円事件の日（12月10日 記念日）はどんな日？
✅ 1968年12月10日に東京都府中市で発生した、日本犯罪史上最も有名な未解決窃盗事件の発生日。
✅ 犯人は白バイ警官に扮し、東芝府中工場のボーナス約3億円を積んだ車ごと奪った完全犯罪だった。
✅ 東芝、日本信託銀行、警視庁などが関わり、その後の日本社会の給与支給や警備体制に大きな影響を与えた。
三億円事件の日（12月10日 記念日）
昭和の終盤、日本が高度経済成長に沸いていた時代。
街にはテレビや洗濯機、カラーテレビが家庭に入り始め、「豊かさ」への希望が高まっていた。
そんな中で起きた「三億円事件」は、国民に衝撃と恐怖を与えると同時に、「犯罪の常識」を塗り替えるような存在となりました。
白昼、東京都府中市で突如姿を現した“警察官”の言葉を信じた銀行員たちは、目の前の現金輸送車を手放します。
その金額、約2億9430万円――現在の価値にしておよそ20〜25億円。
しかもその後、犯人は誰ひとり逮捕されないまま、1975年12月10日に公訴時効を迎えます。
まさに“完全犯罪”として語り継がれるこの事件。
12月10日は、その出来事を風化させず、現代の安全や防犯意識を見直す機会として「三億円事件の日」として記憶されるようになりました。
この記念日は、ただの過去の出来事ではなく、「なぜあの事件が起きたのか？」「なぜ解決されなかったのか？」を再確認する大切な日なのです。
三億円事件の衝撃とその詳細 ― 記念日の由来とは？
1968年（昭和43年）12月10日。
東京都府中市にある「東芝 府中工場」から出た1台の車。
その車には、年末ボーナスとして支給される予定の現金、約2億9430万円が積まれていました。
このお金は日本信託銀行（現在の三井住友信託銀行）国分寺支店から引き出され、銀行員とドライバーの手によって、東芝の社員たちの手元へと届けられる予定でした。
しかし、その途中。
突如、白バイに乗った“警察官”が現れます。
彼はこう言いました。
「この車に爆弾が仕掛けられているという情報がある」
焦る銀行員たち。
そして間もなく、車の下から煙が出始め、まるで“本当に爆発する”ような演出。
誘導された職員が車から離れたその隙に、“警察官”は運転席に乗り込み、そのまま車と現金を持ち去ってしまったのです。
わずか数分の出来事でした。
暴力も武器も使わず、言葉と演技、心理だけで“3億円”を奪ったこの犯行は、「劇場型犯罪」「完璧なトリック」として、当時の日本中を震撼させました。
三億円事件にまつわる豆知識 ― 知れば話したくなる裏話
三億円事件には、今なお語り草になるエピソードが数多く存在します。
いくつかの「豆知識」をご紹介しましょう。
1. 奪われたのは紙幣だけじゃない
盗まれた現金は、主に1万円札と500円札。
実は警察は一部の紙幣番号（500円札2,000枚分）を公表しました。
それにも関わらず、それらのお金は1枚も市場に現れなかったのです。
「使われていない＝ずっとどこかに眠っている」
そう考えた人たちは、空き地、山、川、あらゆる場所を“宝探し”のように掘り返しました。
しかし、ついに現金の一部さえ見つかることはありませんでした。
2. 犯人は少年だった説
警察は、事件発生から2年後、「少年S」と呼ばれる少年を容疑者として特定。
彼は17歳の高校生であり、実際に当時現場周辺に住んでいた経歴や技術を持っていたとされます。
しかし、その少年は捜査中に自殺。
その後、決定的な証拠がなくなり、嫌疑は晴れ、以後の捜査は迷宮入りしていきました。
3. 犯行現場は今も残る
事件が起きたのは、現在の東京都府中市栄町1丁目付近。
現在は普通の住宅街となっており、事件の面影はありません。
ですが、事件を知る地元住民や探偵ファンにとっては、“聖地”のように扱われています。
ひっそりと佇む現場は、今もなお「日本最大の未解決事件の舞台」として、伝説の空気を漂わせています。
三億円事件と深く関わった人物・団体
この事件の当事者は、単に「犯人」と「被害者」だけではありません。
社会の多くの組織が関わり、影響を受けました。
東芝（東京芝浦電気）
当時、府中工場で働く従業員数千人のために年末ボーナスを用意していた東芝。
まさかそれが狙われるとは思わず、事件後は現金輸送のあり方を見直すきっかけとなりました。
日本信託銀行（現・三井住友信託銀行）
実際にお金を管理し、輸送に関わったのが日本信託銀行。
その後、銀行業界全体が「現金ではなく口座振込」での給与支給へと大きく舵を切ることになります。
警視庁・府中警察署
事件の捜査を担当し、のべ17万人以上の警察官が捜査に動員されました。
当時としては前代未聞の捜査規模でありながら、ついに犯人の特定には至らず、捜査史上でも最も「悔しさ」が残る事件のひとつとされています。
三億円事件の日に関するよくある質問
Q1：三億円事件はなぜ「強盗罪」ではなく「窃盗罪」なのですか？
犯人は暴力や脅迫を使わず、あくまで“演技”で相手を騙して車を奪いました。
法律上、「暴行・脅迫」がない場合は「強盗」ではなく「窃盗」に分類されます。
そのため、「三億円強盗事件」という呼び名が一般的ですが、法的には「窃盗事件」です。
Q2：どうして犯人は捕まらなかったのですか？
犯人は多くの証拠を現場に残しましたが、それらは偽装用や陽動のためのものでした。
指紋や車、道具など、すべてが“偽情報”として機能し、真の痕跡は残されていなかったのです。
また、事件直後には「犯人はプロの演出家では？」という声もあり、知能犯であることが伺えます。
Q3：現在でも新たな情報は出てこないのですか？
事件は1975年に時効を迎えており、たとえ真犯人が名乗り出ても法的責任は問えません。
そのため、名乗り出た“自称犯人”が何人も現れましたが、いずれも証拠がなく、真相は解明されていません。
ただし、現在もノンフィクション作家や探偵愛好家たちが事件を研究し、新たな説が語られ続けています。
三億円事件の日を知る意味 ― 完全犯罪が問いかける現代社会への警鐘
三億円事件は、単なる大金を奪った「大きな窃盗事件」ではありません。
この事件が残したのは、“お金の運び方”や“警察のあり方”だけでなく、社会そのものへの大きな問いかけです。
「見た目が警察官なら、人は信じてしまうのか」
「人は、言葉だけで操作されてしまうのか」
そして、
「私たちは本当に、安心して暮らせているのか」
昭和という時代の中で生まれた、奇跡のような完全犯罪。
それは決して他人事ではなく、今もなお現代社会の隙間に潜むリスクを私たちに突きつけています。
12月10日――三億円事件の日。
この日を通じて、あなた自身の「安全」や「信用」、そして「社会の仕組み」をもう一度見直してみてはいかがでしょうか。
