カウンタープレスは、現代サッカーにおいて多くのチームが導入している重要な戦術です。
ボールを失った瞬間に即座にプレスをかけ、相手に反撃を許さずボールを取り戻すことで試合の主導権を維持しやすくなります。
本記事では、カウンタープレスの基本的な概念、状況別の活用方法、リスク管理と引くべきタイミング、実際の練習方法、成功したプロの事例、そして試合での応用方法を具体的に解説します。
カウンタープレスとは?
カウンタープレスとは、ボールを失った直後に、複数の選手が連携して即座にボールを奪い返すための戦術です。
ボールを奪った相手がまだ体制を整えていない瞬間を狙い、早期にボールを取り戻すことで再び攻撃に移行しやすくなります。
この戦術は、リバプールやマンチェスター・シティなどのトップクラブが積極的に取り入れているため、観戦しているときにもよく目にするはずです。
カウンタープレスの目的
カウンタープレスの主な目的は次のとおりです:
- 速攻を阻止する
相手がボールを奪った直後に速いカウンターを仕掛けてくるのを防ぐためです。 - 高い位置でのボール奪取
ボールを奪い返す位置が高ければ、すぐにゴールチャンスへとつなげられるため、攻撃の回数を増やすことができます。 - スタミナの温存
一見、体力を消耗しそうに思えますが、しっかりと連携して短時間でエネルギーを効率的に使えば、守備に回るよりもスタミナを温存できます。
特徴的なプレッシング方法
カウンタープレスには、以下のような特徴があります:
- 数的優位の構築
ボール周辺に人数をかけ、相手の展開を遮断します。 - フィールド位置ごとの適応
攻撃中のフィールド位置によってプレスの強度ややり方が異なり、特に相手ゴール近くやセンターライン付近では全員が連動して動きやすくなります。
カウンタープレスが有効なシチュエーション
カウンタープレスは、フィールドのどこでも同じように有効ではありません。
特に効果を発揮しやすい状況を確認しておきましょう。
1. ハイプレス時
ボールを失った位置が相手ゴールに近い場合は、即座にハイプレスでカウンタープレスをかけるのが効果的です。
高い位置でのボール奪取は、ゴールまでの距離が短いため、即時の得点チャンスに繋がる可能性が高まります。
2. ミドルゾーンでの失点時
ミドルゾーンでボールを奪われた場合は、素早く囲んで相手のパスコースを切りながらプレスをかけるのが有効です。
ここでボールを奪えれば、守備陣が自陣ゴール前まで下がらずに済み、相手にプレッシャーをかけ続けられます。
3. カウンターへの備えとして
カウンタープレスを仕掛けることで、相手が反撃を狙ってパスを出そうとする前にボールを奪い返し、相手にリズムを作らせないようにできます。
このため、ボールロスト直後には、あらかじめ複数人が関わりやすい位置関係を整えておくことが効果的です。
カウンタープレスのリスクと引くべきタイミング
カウンタープレスは非常に効果的な戦術ですが、常に有効とは限りません。
タイミングを誤ると逆にカウンター攻撃を受けやすくなるため、引くべき場面の見極めが重要です。
1. 人数が足りないとき
周囲の選手がプレスに参加できない場合は、無理にプレスをかけると背後に大きなスペースが生まれます。
特に、ボール周辺に相手選手が多い場合や、味方が疲労しているときは一旦リトリートし、守備体制を整えるべきです。
2. 試合の流れが不利なとき
連続してカウンタープレスをかけていると、スタミナを消耗し、プレッシングが効かなくなるリスクがあります。
試合の終盤や得点が欲しい場面では、逆にエネルギーを温存する意識を持ち、無理をせずに状況を見ながら切り替えることが大切です。
3. 守備に戻る選手が少ないとき
ボールを奪い返せなかった場合、逆に自陣ゴールに戻る選手がいなくなるリスクも生じます。
カウンタープレスの練習方法
カウンタープレスを習得するための具体的な練習方法をいくつかご紹介します。
1. 4vs2のボール保持ドリル
4人の攻撃側と2人の守備側に分かれて、攻撃側はパスを回し続け、守備側がボールを奪いに行きます。
- 練習の目的
ボールを失った攻撃側がすぐに奪い返す意識を持つようにします。 - ポイント
守備側はタイミングを見計らって一斉にプレスをかけ、連携してプレッシングに慣れることで、実戦に近い状況が作れます。
2. 5秒ルールトレーニング
ボールを奪われた際に、全員が5秒以内に一斉にプレスをかけるトレーニングです。
- 練習の目的
ボールを奪った瞬間にプレスをかける重要性と、そのタイミングを意識させます。 - ポイント
短期間でプレス力を強化し、素早く奪い返す意識を全員に浸透させます。
3. エリア別のプレス練習(続き)
エリア別のプレス練習では、フィールドを数か所のエリアに分け、それぞれのエリアに配置された選手がプレスを担当することで、チーム全体での一貫した守備ができるようにします。
- 練習の目的
ボールを失った瞬間に、誰がどのエリアでプレスをかけるかを瞬時に判断し、担当エリアで数的優位を作り出せるようにするための練習です。選手が自分のポジションや役割を正確に把握し、エリア別の守備の役割を理解することが目標となります。 - ポイント
エリア内でのプレス担当者は、ボール保持者に最も近い選手が主体となりますが、チーム全体がどのようにサポートするかも重要です。プレスに参加しない選手も、パスコースを切るためのポジショニングや、相手のサポート役を封じる役割を担うことで、効率的にボール奪取の可能性を高めます。 - 具体的なトレーニング例
攻撃と守備に分かれて、ハーフコート内でポゼッションを重視するミニゲームを行います。守備側はエリアごとのプレスを意識し、ボールを奪えたら即座に攻撃へと切り替えます。攻撃側は、奪われないようにパスを回し続けることが目標です。
4. 8vs8+4のハーフコートゲーム
この練習は、攻守の切り替えが頻繁に起こるため、カウンタープレスを実戦に近い形で練習できる方法です。ハーフコート内で8対8の試合を行い、4人のサポート役(中立選手)を設けることで、攻撃側のボール保持が強化され、守備側はカウンタープレスを意識しやすくなります。
- 練習の目的
実際の試合のように攻守が瞬時に切り替わる中で、ボールを失った瞬間にプレスをかけるタイミングや連携を学ぶことが目的です。 - ポイント
プレスに参加する選手の判断と連携が重要であり、全員が動きを予測しながらカバーリングを徹底します。また、ボールを奪った直後の攻撃にすぐ移行できるよう、奪うタイミングとその後の展開を考えたポジショニングも練習の要点です。 - 具体的なトレーニング例
中立選手を各エリアに配置し、攻撃側の選手がパスを繋げやすいようにしつつ、守備側は奪い返す瞬間のプレスを実践します。この練習で全員が役割を理解し、攻守の切り替えに迅速に対応できるようになります。
カウンタープレスが効果を発揮したプロの成功事例
次に、カウンタープレスが効果的に機能したプロの試合例を紹介します。これにより、どのようにしてこの戦術が試合で勝敗を左右するかがわかりやすくなります。
1. リバプール(ユルゲン・クロップ監督)
クロップ監督率いるリバプールは、カウンタープレスの成功例としてよく知られています。リバプールはボールを失った直後、前線の選手を中心に一斉にプレッシングをかけ、ボールを高い位置で奪うことで再攻撃を繰り出します。
この戦術が効果を発揮した例として、特にUEFAチャンピオンズリーグでの数々の試合が挙げられます。リバプールは多くの得点チャンスをカウンタープレスによって生み出し、試合の主導権を握り続けることができました。
2. マンチェスター・シティ(ペップ・グアルディオラ監督)
グアルディオラ監督のマンチェスター・シティも、カウンタープレスを戦術の軸にして成功を収めているチームです。特にボールを高い位置で奪い返し、スムーズに再攻撃に転じることで相手守備陣を崩しやすくなります。
特筆すべきは、グアルディオラがチーム全体に求めるポジショニングの徹底です。カウンタープレス時には選手が適切な位置に配置されているため、パスコースを複数の方向から制限でき、ボール奪取に成功しています。
3. ドイツ代表チーム(ヨアヒム・レーヴ時代)
ドイツ代表チームも、ヨアヒム・レーヴ監督時代にカウンタープレスを取り入れた代表的なチームです。2014年のワールドカップで優勝した際には、この戦術を効果的に活用して勝利を収めました。
特に、ボールを失った際の切り替えが速く、全員が即座にプレスをかけるため、相手が攻撃に移る前に奪い返すことができました。これにより、ドイツ代表は多くの攻撃チャンスを作り、失点を防ぎやすくなりました。
試合でのカウンタープレス応用方法と意識するポイント
カウンタープレスを試合で活用するためには、単に練習でのスキル習得だけでなく、試合での応用力も重要です。ここでは、試合中にカウンタープレスを実践する際の具体的なポイントについて解説します。
1. ポジショニングと視野確保
カウンタープレスをかける際には、自分のポジショニングを相手と味方の両方に対して意識することが重要です。相手の動きや次のパスコースを予測しながら、ボール奪取の機会を狙います。
また、視野を広く持つことで、プレスをかけるときに誰がサポート役になるべきかを即座に判断しやすくなります。
2. 声かけとコミュニケーション
カウンタープレスは複数人が連動して行うため、試合中の声かけや意思疎通が非常に重要です。特に、どの選手がプレスの先陣を切るか、どのタイミングで動き出すかを知らせることで、スムーズにカウンタープレスをかけることができます。
試合中は短い言葉で素早く情報を伝えることが効果的です。例えば、「右に寄せろ」や「後ろカバー」など、即座に行動できる言葉を選びましょう。
3. プレッシングのタイミングを見極める
カウンタープレスの成功には、適切なタイミングが不可欠です。相手がパスを出そうとした瞬間や、トラップでボールが浮いたタイミングなど、ボールを奪いやすいタイミングを見逃さないことが重要です。
焦ってプレスに行き過ぎてしまうと、逆に簡単にかわされることもありますので、相手のボールコントロールに隙が生じた瞬間を狙いましょう。
4. ディフェンスラインとの連動
前線でカウンタープレスをかける際には、ディフェンスラインとの距離感も重要です。ディフェンスラインが適切に連動して押し上げられていないと、相手にスペースを与えやすくなり、抜け出されるリスクが高まります。
守備ラインも含めた全員が連動してプレスをかけることで、カウンタープレスの効果を最大化することができます。
まとめ:カウンタープレスで試合の主導権を握る
カウンタープレスは、ボールを失った瞬間に即座にプレスをかけてボールを奪い返すことで、相手に速攻を許さず、再び攻撃に転じることができる強力な戦術です。
リバプールやマンチェスター・シティのようなプロチームでも取り入れており、現代サッカーにおいて非常に重要な役割を果たしています。
練習では、4vs2やエリア別プレス練習などでスキルを身につけ、実際の試合でカウンタープレスを応用するためには、ポジショニングや声かけ、タイミングの見極めなどの要素を意識する必要があります。
試合の中でカウンタープレスを成功させることで、攻撃回数が増え、試合の主導権を握りやすくなります。
カウンタープレスを活用し、チームのパフォーマンスを向上させて勝利を目指しましょう。