サッカーにおけるプレッシング戦術を徹底解説!その種類と効果、リスクまで完全網羅

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サッカーの試合において、プレッシングは相手選手に圧力をかけ、ボールを奪取して自分たちのペースでゲームを進めるための非常に重要な戦術です。

現在のサッカーでは、攻撃だけでなく守備戦術も高度化し、特にプレッシングが試合の主導権を握る鍵となっています。

この記事では、プレッシング戦術の種類とそれぞれの効果、リスク、そして成功のための要素について詳しく解説します。

プレッシング戦術を深く理解することで、サッカー観戦がより一層楽しくなるはずです。


プレッシングとは何か?その基本的な考え方

プレッシングとは、相手がボールを保持している際に積極的に圧力をかけてミスを誘発し、ボールを奪うことを目的とした戦術です。

サッカーでは、ボールを持たないチームが攻撃を遅らせるだけでなく、逆に相手に素早く圧力をかけることで主導権を取り戻すことが可能です。

プレッシングの基本的な目的は以下の2つです。

  • 相手の攻撃を阻止・遅延する
    ボールを持った相手が思い通りに攻めてこないように、圧力をかけて攻撃を妨害します。
  • 自陣に持ち込まれる前にボールを奪取する
    ゴールに近づくほど失点のリスクが高まるため、できるだけ高い位置でボールを奪い、攻撃に転じやすくすることが理想です。

このプレッシングの目的を達成するため、プレッシング戦術は相手ボールホルダーだけでなく、ボールを受けようとする選手にも圧力をかけ、パスコースを塞ぐことも含まれます。


代表的なプレッシング戦術とその特徴

プレッシングの手法にはいくつかの種類があります。

ここでは、現代サッカーでよく使われる「ハイプレス」「ミドルプレス」「ロープレス」の3つの戦術について解説します。


1. ハイプレス

ハイプレスは、相手ゴール付近で圧力をかけてボールを奪いに行く積極的な戦術です。

高い位置でディフェンスラインを保ち、前線から相手のビルドアップを阻止することで、相手の攻撃を未然に封じます。

メリット

  • ボールを奪った際にゴールまでの距離が短く、すぐに得点チャンスを作れます。
  • 相手がボールを持つ時間が少なくなるため、相手の戦術を崩すことができます。

デメリット

  • ハイプレスを仕掛けるためには体力が非常に必要です。
  • プレッシングをかわされると自陣が手薄になるため、逆にカウンター攻撃を受けやすくなります。

ハイプレスの実例

リヴァプールのユルゲン・クロップ監督は「ゲーゲンプレス」と呼ばれるハイプレス戦術を多用し、相手がボールを奪った直後に全員で素早くボールを奪い返すプレーが特徴です。

これは、失った瞬間に奪い返すことで相手の攻撃を阻止し、カウンターの機会を作りやすくしています。


2. ミドルプレス

ミドルプレスは中盤で圧力をかけ、相手が自陣からボールを運んできた際にプレッシングを仕掛ける戦術です。

ハイプレスよりも守備リスクを抑えつつ、相手のビルドアップを妨害します。

メリット

  • 運動量を比較的抑えながらも、効果的にボールを奪えるため、選手のスタミナが持ちやすい。
  • 相手のフォーメーションが上がるスペースを封じ、守備ブロックを作りやすくなります。

デメリット

  • ゴールから距離があるため、奪った後に攻撃に転じるまで時間がかかる。
  • 守備ラインを前に出しすぎると、裏のスペースを突かれるリスクがあります。

ミドルプレスの実例

スペインのバルセロナが、ペップ・グアルディオラ監督の時代に用いた「ティキタカ」スタイルは、ミドルプレスを基盤とし、相手が自陣でボールを持つ際に圧力をかけることで、ポゼッションを支配する戦術です。


3. ロープレス

ロープレスは、自陣に守備ラインをしっかり敷いてからプレッシングをかけ、堅実に守備を行う戦術です。

これは特に強敵との試合や、カウンターを警戒したい時に有効です。

メリット

  • 守備が安定し、失点リスクを抑えられる。
  • 自陣でボールを奪えば、広いスペースができるため、カウンターの展開がしやすくなります。

デメリット

  • ゴールから遠い位置でボールを奪うことが多くなるため、攻撃に移るまで時間がかかる。
  • 相手がセットプレーなどでボールを保持する時間が長くなる可能性があります。

ロープレスの実例

イタリアの代表チームは、歴史的に「カテナチオ」と呼ばれる守備戦術を得意としています。

これは低い位置でのプレッシングと堅固な守備ブロックを組み合わせた戦術で、失点を最小限に抑えることを目指しています。


プレッシングのメカニズムと理論

プレッシングには、相手の動きに応じた柔軟な戦術展開が求められます。

ここでは、プレッシングの基礎理論である「ゾーンプレス」と「マンツーマンプレス」について解説します。

ゾーンプレス

ゾーンプレスは、特定のエリア(ゾーン)にいる相手に対してプレッシングをかける戦術です。

この戦術では、ボールの位置に応じてチーム全体が連動してプレスを行い、特定のゾーンを封鎖します。

ゾーンプレスの利点は、守備ラインが一体となってプレスをかけるため、相手がボールを保持しにくくなる点です。

マンツーマンプレス

マンツーマンプレスは、各選手が決められた相手に直接プレスをかける方法です。

この戦術では、ボールを持つ選手だけでなく、ボールを受けようとする相手選手に対しても圧力をかけ、パスの受け手を封じます。

マンツーマンプレスは、相手の動きに合わせて柔軟に対応できる反面、体力の消耗が激しくなるため、後半に崩れやすいというリスクもあります。

プレッシング戦術の成功に必要な要素

プレッシングを成功させるためには、チーム全体での高度な連携と、選手一人ひとりのスキルが欠かせません。 ここでは、プレッシングを効果的にするための要素を3つ挙げ、それぞれ解説します。

1. 選手のフィジカルとメンタルの強化

プレッシングは、持久力、瞬発力、判断力がすべて求められる非常にハードな戦術です。

特に、ハイプレスのように前線から積極的にプレッシャーをかける戦術では、選手のスタミナがすぐに消耗してしまうため、プレースタイルに合った体力トレーニングが必要です。

また、試合中は常に「次にどのポジションでボールを奪うか」などの判断が要求されるため、メンタルの集中力も重要です。

疲労によって集中力が切れると、相手のプレーに対応しきれず、簡単にプレスを突破されてしまう可能性もあります。


2. 各ポジションごとの役割理解とポジショニング

プレッシングは、チーム全体で一斉に行う戦術であり、各ポジションごとに異なる役割が求められます。

  • フォワード
    プレスを最初に仕掛ける役割です。 相手ディフェンスラインやゴールキーパーにプレッシャーをかけ、パスコースを限定し、相手の攻撃を封じます。
  • ミッドフィルダー
    フォワードとディフェンスの橋渡し役として、相手の中盤でボールを持つ選手をマークし、パスの供給を遮断します。 特にセンターハーフの選手は、相手のボランチを封じることで、攻撃の流れを断つ重要な役割を担います。
  • ディフェンダー
    最終ラインから前線にプレスをかける際のサポートを行い、ラインを高く保ちつつ、相手が裏を狙ってきた場合には素早く戻る準備をします。 ディフェンダーがしっかりとポジションをとり、リーダーシップを発揮することで、チーム全体の守備バランスを整えます。

これらの役割を全員が正確に理解し、ポジショニングを守ることで、プレッシングが効果的に機能します。


3. 戦術運用の柔軟性と判断力

プレッシング戦術は、相手チームのプレースタイルや試合展開に応じて柔軟に変更する必要があります。

例えば、相手がロングボールを多用してプレッシングをかわそうとしている場合には、ハイプレスを控え、ミドルプレスやロープレスへと切り替えることが重要です。

また、試合の状況に応じて、一時的にプレッシングを緩めて守備ブロックを形成し直すといった判断力も、プレッシングの成功に大きく影響します。

プレッシングを効果的に実行するには、監督と選手の戦術理解と的確な判断力が求められます。


プレッシング戦術のリスクとその回避方法

プレッシングは強力な戦術ですが、リスクも伴います。 ここでは、プレッシング戦術における主なリスクと、それを回避するための方法を解説します。

1. 相手にスペースを与えてしまうリスク

プレッシングを仕掛けると、どうしてもディフェンスラインが高くなり、背後にスペースが生まれやすくなります。

その結果、相手にロングボールで裏を突かれるカウンター攻撃を許してしまう可能性があります。

回避策

  • ディフェンスラインと中盤の距離を極力コンパクトに保つことで、相手が裏を狙うスペースを減らします。
  • ゴールキーパーの積極的な飛び出しによって、裏へのパスに対する対応力を高めることも効果的です。

2. 選手の体力消耗によるパフォーマンス低下

特にハイプレス戦術では、選手の運動量が多くなるため、試合の後半には体力が低下し、プレッシングが緩んでしまうことがあります。

体力が落ちると集中力も低下し、相手に簡単にプレスを突破されやすくなるリスクもあります。

回避策

  • 交代選手を活用し、新鮮な選手を投入することでプレスの勢いを維持します。
  • 試合の状況に応じて、ハイプレスからミドルプレス、もしくはロープレスに切り替え、選手の負担を軽減する戦術変更も効果的です。

3. 相手のプレス回避策への対応力不足

近年、プレッシングを避けるために、ビルドアップやロングボールでプレッシングを回避する戦術を取るチームも増えています。

プレッシングが無効化されると、守備の一貫性が失われ、簡単に攻撃を許してしまうこともあります。

回避策

  • 相手のプレッシング回避方法に対応するため、ハイプレスとミドルプレス、ロープレスの使い分けを柔軟に行います。
  • プレッシングラインを一度下げて守備ブロックを形成し直すなど、守備の柔軟性を持たせることで対応力を高めることが可能です。

プレッシング戦術を観戦時に楽しむためのポイント

プレッシングは、サッカー観戦においても見どころの一つです。 観客として試合を楽しむ際には、以下のような観点からプレッシング戦術を観察すると、サッカーの奥深さを感じられるでしょう。

1. 各ポジションの連動性を見る

プレッシングは、チーム全体が連動して行う必要がある戦術です。 フォワードが相手にプレッシャーをかけ始めたら、すぐに中盤やディフェンスラインが連動してプレスを強め、パスコースを制限する動きが見られます。

チーム全体が一体となってプレッシングを仕掛ける場面では、選手たちがまるでひとつの生き物のように動く連携プレーが楽しめます。

2. プレッシングの切り替えタイミングに注目

試合の状況によって、プレッシングの形を変更するタイミングにも注目しましょう。

例えば、得点差がある場面や後半の体力消耗が激しい場面で、ハイプレスからミドルプレス、もしくはロープレスに切り替える判断は、監督の戦術的な工夫が表れています。

監督がどのような意図でプレッシングを変えるのかを考えながら観戦すると、試合がより戦略的に見えてくるでしょう。

3. プレッシングによって生まれるボール奪取とカウンター

プレッシングが成功すると、チームはボールを奪い、速攻(カウンター)に移行する絶好のチャンスが生まれます。

相手のボールを奪ってから、何秒でシュートまで持ち込めるかという「トランジション」の速さも見どころです。

特にハイプレスを行うチームは、奪った瞬間にすぐに攻撃に移る場面が多く、観客にとっても緊張感のある瞬間となります。


まとめ

プレッシング戦術は、現代サッカーにおいて非常に重要な役割を果たす攻守一体の戦術です。

この記事で解説したように、「ハイプレス」「ミドルプレス」「ロープレス」といった異なる戦術には、それぞれに異なる利点とリスクが存在します。

プレッシング戦術を使い分け、試合の状況に応じた適切なタイミングで切り替えることで、チームは相手に対して優位に立つことが可能です。

プレッシング戦術をしっかり理解して観戦することで、サッカーの試合はさらに面白くなります。

ぜひ次の試合観戦では、各チームがどのようなプレッシング戦術を使い、どのように試合をコントロールしようとしているのか注目してみてください。

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