サッカーの試合では、90分という規定時間に加え、「追加タイム」（アディショナルタイム）が設定されます。
観戦していると、掲示される時間が異なることに驚くこともあるでしょう。
「なぜ、この試合では追加タイムが多いのか？」「どのようにして追加タイムが決められているのか？」と疑問に感じるファンも多いはずです。
ここでは、その疑問に対して、追加タイムの計算方法や、理由について徹底的に解説します。
1. 追加タイムの計算方法とは？
まず、サッカーの試合では、プレー中断が起きることが度々あります。
その時間を埋め合わせるために設けられるのが追加タイムです。
サッカーは流れるようなスポーツであり、他の競技のように時計が止まることはありません。
そのため、試合の中で発生した中断時間を埋め合わせる必要があります。
追加タイムの計算方法は、主に以下の要素に基づいています。
1.1 選手交代
試合中に選手交代が行われる際、試合は一時的に中断します。
この中断時間は、通常1回の交代で30秒程度が加算されます。
2022年のルール改正により、1試合で最大5回の交代が認められています。
そのため、交代が全て行われた場合は、交代に伴う中断時間だけで2分半～3分程度が追加タイムとしてカウントされることが一般的です。
1.2 負傷者の治療
負傷者が発生した場合、その選手がピッチ上で治療を受けたり、担架で運び出されたりする際の時間も、追加タイムに含まれます。
この時間は負傷の程度によって異なり、軽傷であれば1分以内、重傷であれば数分に及ぶこともあります。
例えば、2022年のワールドカップでの試合では、イランのゴールキーパーが負傷し、約10分間にわたって試合が中断しました。
その際、追加タイムは前半で14分と異例の長さになりました。
1.3 ゴール後のセレブレーション
ゴールが決まると、チームは得点を祝うために短い時間のセレブレーションを行います。
このセレブレーションが長引く場合も、プレーが一時的に中断されるため、追加タイムに影響します。
特に劇的なゴールや、試合の勝敗を決定づけるゴールが決まった場合には、選手やファンの興奮が高まり、セレブレーションが数分間続くことがあります。
このような状況では、主審がその時間を考慮して追加タイムを設定します。
1.4 VAR（ビデオ・アシスタント・レフェリー）のチェック
近年、VARの導入により、試合中の判定がビデオで再確認されることが増えました。
VARのチェックは、ペナルティやゴールの判定など、試合の重要な場面で行われます。
このチェックに要する時間も、追加タイムに影響します。
例えば、オフサイドやハンドの判定が難しく、数分間のチェックが必要になる場合、その時間も追加されます。
特にVARによる確認は、数分にわたることがあり、試合全体の流れを止める要因となります。
1.5 遅延行為（時間稼ぎ）
試合終盤でリードしているチームが、時間稼ぎのためにボールを長く保持したり、わざとゆっくりプレーを再開する行為も、追加タイムの対象となります。
このような遅延行為は、試合の公平性を保つために、主審が厳しく対応することが求められます。
例えば、ゴールキーパーがゴールキックをゆっくり行ったり、選手が交代時にピッチをゆっくりと退場する場合、主審がその行為を注意し、追加タイムに加算することがあります。
2. 追加タイムの決定権は誰にあるのか？
追加タイムの決定権は、主審に一任されています。
サッカーの試合では、主審が試合全体の進行をコントロールし、プレーの中断時間を適切に把握しています。
そのため、試合の中でどれだけの時間が中断されたかを総合的に判断し、追加タイムを設定します。
サイドライン上に配置されている第4の審判が、主審の指示に基づいて、スタジアムの観客やテレビ視聴者に対して、追加タイムを掲示します。
掲示される時間は、主に「最低でもこの時間は追加される」という意味を持ちますが、実際にはその時間を超えることもしばしばあります。
これは、追加タイム中にも新たな中断が発生する可能性があるからです。
例えば、ロスタイム中にゴールが決まったり、選手が負傷したりすると、その時間もさらに追加されます。
3. 追加タイムが長くなる場合の具体例
追加タイムが通常より長くなるケースも多々あります。
特に国際大会や、プレミアリーグなどでは、試合の状況によっては10分以上の追加タイムが取られることがあります。
3.1 ワールドカップ2022のケース
ワールドカップ2022では、特に追加タイムが長くなる試合が多く見られました。
例えば、イングランド対イランの試合では、前半に14分、後半に10分の追加タイムが設定されました。
合計24分もの追加タイムが設定されたのは、VARによる確認、ゴール後のセレブレーション、そして負傷者が長時間治療を受けたことが要因です。
この試合では、最終的に6-2でイングランドが勝利しましたが、追加タイムが試合の展開に大きな影響を与えたことは間違いありません。
3.2 プレミアリーグでの劇的な逆転劇
プレミアリーグでも、ロスタイムに劇的な逆転劇が起こることがあります。
例えば、2013年のマンチェスター・ユナイテッド対マンチェスター・シティの試合では、ロスタイムにマンチェスター・ユナイテッドが逆転ゴールを決め、試合の結果が大きく変わりました。
このような劇的な展開は、ファンにとっても感情が高まる瞬間であり、追加タイムがいかに試合において重要な役割を果たすかを物語っています。
4. 追加タイムに関する誤解
追加タイムについては、いくつかの誤解が存在します。
その一つが、「掲示された時間が試合終了の時間そのもの」というものです。
実際には、追加タイムに掲示された時間は、最低限追加される時間であり、それ以上プレーが続くことがあります。
特に、追加タイム中にゴールが決まったり、負傷者が発生した場合、その分の時間がさらに追加されます。
また、試合終了間際に大きな中断が発生した場合、主審は掲示された時間以上にプレーを続ける判断を下すことができます。
そのため、試合終了まで目が離せないのがサッカーの魅力の一つです。
追加タイムに関するもう一つの誤解は、「すべての中断時間が正確に追加タイムとして反映される」というものです。
実際には、プレーの中断が細かく発生しても、その全てが厳密に追加タイムにカウントされるわけではありません。
特に、ボールがサイドラインを割った際のスローインや、ゴールキックなどの短い中断は、通常の試合進行の一部として扱われ、追加タイムの計算には含まれないことが多いです。
これは、サッカーの試合が持つ「流れ」を重視しているためです。
主審の裁量による判断
追加タイムの長さは、主審の判断に大きく依存しています。
主審は、試合中の様々な要素を考慮し、適切な時間を追加タイムとして設定します。
たとえば、負傷者が出た場合でも、治療が迅速に行われて試合の流れに大きな影響を与えなければ、追加される時間は少なくなることがあります。
逆に、特に重要な試合では、主審が慎重に時間を管理し、必要に応じて多めに追加することもあります。
こうした判断は、試合の公平性と流れを保つためのものであり、単に時間を厳密に測るだけではない、スポーツ特有のダイナミズムが求められます。
サッカー文化に根付く追加タイム
追加タイムに関する誤解が生じる背景には、サッカーの試合進行に対する文化的な理解の違いもあります。
例えば、バスケットボールやアメリカンフットボールでは、プレーが止まるたびに試合時間も停止するため、時計が正確に試合時間を反映します。
一方、サッカーでは試合時間が常に進行しており、追加タイムはその中断時間を主審が「補正」する役割を果たしています。
そのため、サッカーに慣れていない観客や新しいファンには、追加タイムの概念が曖昧に感じられることがあるかもしれません。
しかし、この自由な時間管理がサッカーの一部であり、何が起こるかわからない試合の緊張感を高める要素でもあります。
サッカーの「時間稼ぎ」と追加タイム
特に注目すべきもう一つの点は、「時間稼ぎ」に対する主審の対応です。
試合終盤、リードしているチームは時間を稼ぐために、あえてゆっくりプレーを進めたり、交代の際に選手が意図的に時間をかけることがあります。
これらの行為は、サッカールールでは明確に反則とはされていませんが、主審の裁量で遅延行為として判断されることがあります。
その結果、遅延行為が頻繁に見られた場合、主審は追加タイムを多く取り、時間稼ぎを行ったチームが思わぬ「逆効果」に見舞われることもあります。
一例として、時間稼ぎを試みたチームがロスタイムに失点し、勝利を逃すという劇的なシナリオも過去には数多く存在します。
こうしたドラマチックな展開こそが、サッカーの醍醐味の一つであり、追加タイムはそのスリルを最大限に高める要素でもあるのです。
追加タイムが長くなる試合の傾向
試合によっては、追加タイムが異常に長く設定されることがあります。
特に、国際大会やカップ戦の決勝戦では、試合が膠着状態に陥るとプレーが中断する頻度が増え、追加タイムが長くなる傾向があります。
また、VAR（ビデオ・アシスタント・レフェリー）の導入により、判定の確認や修正に時間がかかるケースが増えたため、これも追加タイムが延びる要因の一つです。
2022年のワールドカップでは、特にこの傾向が顕著でした。
例えば、イングランドとイランの試合では、負傷による治療やVARによる判定の確認が重なり、前半で14分、後半で10分もの追加タイムが取られました。
このような異例の長さの追加タイムは、試合をよりフェアに運営するために必要なものであり、時には試合の結果に大きな影響を与えることもあります。
追加タイムの今後
今後、サッカーのルールはさらに進化し、追加タイムの運用にも変化が加わる可能性があります。
特にVARの進化や、試合運営のデジタル化が進む中で、より正確な時間管理が求められる場面が増えるでしょう。
また、試合の興行的な側面も考慮され、観客にとってよりエキサイティングな演出が求められることも考えられます。
例えば、追加タイムの可視化をさらに強化し、リアルタイムでの時間管理が観客にもわかりやすく表示されるような仕組みが導入されるかもしれません。
いずれにせよ、追加タイムはサッカーの試合における重要な要素であり続け、試合の行方を左右する決定的な瞬間を生み出す役割を担っていくでしょう。
まとめ
追加タイムは、サッカーの試合の中で極めて重要な役割を果たします。
それは、単なる「おまけ時間」ではなく、試合の公平性を保つための必要不可欠な要素です。
選手交代、負傷者の治療、VARの確認、そして遅延行為など、試合中に発生する様々な事象を反映して、主審が慎重に判断するものです。
また、追加タイムは試合の緊張感を高め、何が起こるかわからないスリリングな展開を生み出すことも多く、サッカーの魅力を一層引き立てる要素とも言えます。
次回の試合では、掲示された追加タイムの意味や、その背景にある試合の流れに目を向けてみると、より深くサッカーを楽しめるでしょう。