サッカーの試合は、90分で決着がつかないこともしばしばあります。
特に、カップ戦やトーナメント方式の試合では、引き分けが許されないため、試合が延長戦に突入し、それでも勝敗が決まらなければPK戦が行われます。
サッカーファンにとっても、選手にとっても、これらの延長戦やPK戦は特別な緊張感をもたらし、試合の運命が劇的に変わる瞬間です。
この記事では、サッカーの延長戦とPK戦のルールについて、最新のFIFAルールも交えながら詳しく解説します。
さらに、実際の試合例や、心理的・戦術的な側面からも掘り下げ、どのようにして試合が動いていくのかを詳しく見ていきます。
延長戦の基本ルールとは？
通常のサッカーの試合は90分（前半45分、後半45分）で行われます。
しかし、勝敗が必要な試合で同点となった場合、延長戦が行われます。
延長戦は合計30分で、前後半に分かれて15分ずつのプレーとなります。
この30分の間でどちらかのチームがリードを奪えば、そのまま試合終了です。
もし30分の延長戦でも同点の場合、PK戦に進みます。
延長戦の最大の特徴は、選手たちの体力や精神力が試されるという点です。
通常の90分間を戦い抜いた後、さらに30分を全力でプレーすることは、並大抵のことではありません。
ここで、監督が選手交代をどのタイミングで行うか、あるいは守備的に戦術を切り替えるかなど、緻密な判断が勝敗を分ける重要な要素となります。
過去に存在した「ゴールデンゴール」「シルバーゴール」ルール
過去には、延長戦での決着方法として「ゴールデンゴール」や「シルバーゴール」というルールが存在しました。
- ゴールデンゴール：延長戦中に最初にゴールを決めたチームがその瞬間に勝利を手にするルールです。いわゆる「サドンデス」として知られ、ゴールが決まった瞬間に試合が終了しました。1998年のワールドカップでもこのルールが適用され、フランス代表がゴールデンゴールによってパラグアイを下したことで、このルールが一時期注目を集めました。
- シルバーゴール：延長戦の前半でゴールが決まった場合、その後の前半が終了するまで試合が続けられ、後半開始前にリードしたチームが勝利となるルールです。ゴールデンゴールの劇的さをやや和らげたこのルールは一時的に採用されましたが、現在はどちらのルールも廃止されています。
現在のサッカーでは、延長戦は必ず30分間行われ、その後に決着がつかない場合はPK戦に突入します。
FIFAルールの最新変更点と延長戦の交代枠
延長戦において、最近のFIFAルール変更では交代枠に関する新しい規定が設けられています。
通常の試合では5人の選手交代が認められていますが、延長戦に突入した場合はさらに1人、合計6人まで交代が可能です。
この追加交代枠が試合の戦略に与える影響は大きく、特に延長戦に突入することで疲労が蓄積する選手たちの体力を回復させるために、新しい選手を投入することができます。
実際、2022年のカタールワールドカップでも、この追加交代枠をうまく活用して、延長戦で試合の流れを変えたチームが多く見られました。
延長戦での戦術とチームの戦略
延長戦では、戦術が通常の90分間とは異なる形で展開されます。
多くのチームは、90分が経過した時点で体力が限界に達しているため、守備を固めてカウンターアタックを狙う戦術に切り替えることがよくあります。
特に、延長戦での失点はそのまま試合の敗北に直結するため、リスクを最小限に抑えるための慎重な戦術が選ばれます。
一方で、リスクを冒してでもゴールを奪いに行く攻撃的な戦術を選ぶチームもあります。
例えば、延長戦での交代枠を使ってフレッシュなアタッカーを投入し、攻撃を強化することで相手チームの守備にプレッシャーをかける戦術です。
このように、延長戦では各チームの戦術的な選択が試合の結果を大きく左右します。
PK戦のルールと心理戦
延長戦で決着がつかない場合、最終的にはPK戦が行われます。
PK戦では、各チームから5人ずつ選手が選ばれ、ゴールキーパーとの1対1の対決に臨みます。
PK戦は、戦術や技術だけでなく、メンタルの強さが非常に重要な要素となります。
多くの選手はPK戦のプレッシャーにより、普段の冷静なパフォーマンスが発揮できないことがあります。
ここで重要なのは、キッカーの心理的な落ち着きです。
実際、過去の大会でも数々の名選手がPK戦で失敗したことが試合の結果を決めたことがあります。
例えば、1994年のワールドカップ決勝でブラジルと対戦したイタリアのロベルト・バッジョが決定的なPKを外してしまい、ブラジルが優勝したシーンは、多くのサッカーファンの記憶に残っています。
また、ゴールキーパーも心理戦を仕掛けます。
キッカーがボールを蹴る直前にゴールキーパーが動きを変えたり、目線をずらしたりすることで、キッカーの集中力を揺さぶることがよくあります。
ゴールキーパーは、ボールが蹴られる瞬間に反応してセーブすることが求められますが、そのためには相手の体の動きを読み取る技術が必要です。
PK戦での戦術的選択と勝利への道
PK戦では、監督も重要な役割を果たします。
どの選手をキッカーに選ぶか、どの順番で蹴らせるかは試合の結果を左右する大きな要素です。
多くの監督は、経験豊富な選手やメンタルが強い選手を優先して選びますが、時には予想外の選手が決定的な場面で成功を収めることもあります。
例えば、2020年のユーロではイタリアのゴールキーパー、ジャンルイジ・ドンナルンマがPK戦で複数のセーブを行い、イタリアを優勝に導きました。
PK戦では一瞬の判断ミスが勝敗を分けるため、選手たちには冷静さが求められますが、緊張感の中でそれを維持するのは非常に難しいことです。
まとめ
サッカーの試合で延長戦やPK戦が行われる瞬間は、試合全体の流れを劇的に変える場面です。
特に、トーナメント形式の試合では勝敗が決まるまで緊張感が途切れることはなく、選手たちの集中力や体力、そしてメンタルが試されます。
延長戦では30分間の追加プレーが行われ、それでも決着がつかない場合はPK戦に突入します。
PK戦では、技術だけでなく心理的なプレッシャーとの戦いが繰り広げられ、歴史に残る名勝負や名シーンが数多く生まれます。
延長戦とPK戦のルールをしっかり理解し、その裏にある戦術や心理戦を知ることで、サッカー観戦はさらに深いものになるでしょう。