世界人権デー(12月10日)はどんな日?
✅ 1948年12月10日に採択された「世界人権宣言」を記念する、国際連合制定の国際デー。
✅ 世界人権宣言は、人種・国籍・性別などを問わず、すべての人の「自由・尊厳・平等」を宣言する人類共通の基盤文書。
✅ 国際連合と、日本では法務省および全国人権擁護委員連合会などが、毎年この日に合わせて人権啓発活動を展開している。
「世界人権デー」は、ただのカレンダー上の記念日ではありません。
人種や国籍、性別、宗教、言葉――どんな違いがあっても、ひとりの「人間」として尊重されるべき。
そのことを世界中に示した、歴史的で重みのある1日です。
以下では、その由来、背景、豆知識、関係者、そして私たち一人ひとりができることまで、ゆったり読みやすく紹介します。
なぜ12月10日? 世界人権デーの由来と歴史背景
第二次世界大戦が終わって数年。戦争によって生じた数え切れない犠牲。
「もう二度と、あの悲惨を繰り返してはならない」── そうした思いが、国際社会の大きなうねりとして広がった時代でした。
1948年12月10日。フランス・パリのシャイヨ宮で開かれた国際連合(国連)の第3回総会。
そこに集まった加盟国の代表たちは、苦難の歴史を乗り越え、全人類のための明日を誓いました。
採択された文書が、世界人権宣言(Universal Declaration of Human Rights)です。
この宣言は、前文と30条からなり、以下のようなすべての人に共通する基本的人権を規定しています。
- 私たちは生まれながらにして尊厳と自由を持つ
- 言論、信仰、集会の自由
- 教育や医療、労働、住まいの権利
- 公正な裁判、拷問・奴隷の禁止、平等な扱い
法的な拘束力は持たないものの、その価値と精神は、後の人権条約や各国の憲法、人々の良心に受け継がれていきました。
そして翌1950年、第5回の国連総会でこの宣言の採択日である12月10日を国際デーと定め、以降世界各国で「世界人権デー」が記念されるようになりました。
つまり、12月10日は、「すべての人に尊厳と権利を」という国際社会の決意と、未来への誓いを象徴する日です。
世界人権デーにまつわる豆知識──日本と世界の広がり
この日は世界中で“人権”について考えるきっかけとして、さまざまなイベントや取り組みが行われます。
日本での取り組み
日本では、12月10日を含む 12月4日〜10日の1週間 を 人権週間 と定めて、毎年全国的に啓発活動が行われます。
さらに、その前の 11月11日〜12月10日 を 人権尊重推進強調月間 と呼び、人権に対する理解を深め、人権尊重の意識を高める期間としています。
この時期、多くの学校や自治体、地域コミュニティ、企業で次のような取り組みが見られます。
- 人権啓発ポスターの掲示
- 小中高校での道徳授業や特別学習
- 市民センターなどでの講演会、シンポジウム
- 映画上映会やワークショップ
- SNSでの「人権って何?」投稿キャンペーン
多様性や共生、差別のない社会を目指す気運が高まり、子どもから大人まで、人権について考えるきっかけになります。
世界での広がり
国連を中心に、多くの国や地域で人権保護や啓発活動が行われています。
その年々でテーマは異なり、「平等」「性別」「難民」「貧困」「移民」「LGBTQ+」「障がい」など、時代や社会問題に応じて焦点が当てられます。
たとえば、ある年には「子どもの権利」、別の年には「言論の自由」「ジェンダー平等」「気候変動と人権」などがテーマに選ばれ、人々やメディアを通じて議論が呼びかけられます。
こうした世界的な連携のおかげで、人権は「遠い理想」ではなく、「身近なテーマ」「自分たちの暮らしの中」にあるものとして、意識が広がっています。
世界人権デーに関わる人物・団体──過去と現在の“守る”人たち
「世界人権デー」の立役者と言えるのは、まず国際社会――とりわけ国際連合(UN)です。
国連は1948年の総会で宣言を採択し、その後も人権の保護・促進のために多数の条約や制度を整えてきました。
現在では、特に国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が世界各地で人権侵害や差別の実態調査、報告、提言、支援を行っています。
毎年12月10日には声明を発表し、その年の世界の人権課題を国際社会に伝えています。
日本国内では、法務省 と全国人権擁護委員連合会 を中心に、「人権週間」「人権尊重推進強調月間」を通じて人権教育や啓発活動が展開されます。
さらに、地方自治体や学校、地域団体、企業などが協力し、地域に応じたイベントや学習会を開催します。
近年は企業の社会的責任(CSR)や持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みの中で、人権方針やダイバーシティ推進を掲げる企業も増えています。
たとえば、就労環境改善、ハラスメント防止、多様性に配慮した働き方、障がい者や移民・外国籍社員への支援――こうした取り組みは、人権の理念が企業活動にも浸透している証です。
また、個人レベルでも、いじめ防止、ヘイトスピーチへの注意、SNSでの誹謗中傷を避ける姿勢、多様なセクシュアリティへの理解など、私たちの日常生活の中に「人権を尊重する行動」が求められています。
世界人権デーについて
Q1. 世界人権デーは祝日になりますか?
いいえ。世界人権デーは国際的な記念日ですが、日本も含め多くの国で祝日にはなっていません。
しかし、公的な啓発や学校・自治体・企業での取り組みが行われており、社会的な「意識の日」となっています。
Q2. 世界人権宣言には法的拘束力がありますか?
宣言そのものは条約ではなく、法的な拘束力を持ちません。
しかし、その理念は後に多くの国際人権条約や各国の憲法、法律に反映され、国際人権法の根幹となっています。
つまり、理想の指針でありながら、その後の制度や法律の基盤として強い影響力を持っています。
Q3. なぜ日本では12月4日〜10日を「人権週間」にしているのですか?
「世界人権宣言」の採択日を含む1週間を、人権について考える期間とすることで、日々の啓発や教育活動を集中させ、広く人権の大切さを伝えるためです。
1949年に法務省と全国人権擁護委員連合会によって制定され、以来多くの学校や自治体、企業が毎年さまざまな取り組みを行っています。
世界人権デーまとめ
現代は、グローバル化や移民の増加、難民問題、格差拡大、性別や性の多様性への理解――。
社会の構造や価値観が多様化する中で、「人権」の意味はかつてないほど問い直されています。
また、戦争や紛争、貧困、気候変動など地球規模の課題とも、人権は深くかかわっています。
だからこそ、ただ「昔の文書」を振り返るのではなく、今の時代に合わせて「人権とは何か」「私たちはどのように尊重し合うか」を考える必要があります。
「世界人権デー」は、その問いを始めるきっかけ。
個人として、家族として、コミュニティとして。
あるいは企業や学校として。
それぞれの立場でできることを見つける日。
「誰も排除されず、誰もが尊重される社会」。
それを、ひとり一人の日々の言葉と行動で築き直していく。
だからこそ、この日をただの“記念日”で終わらせず、未来への小さな一歩にしてほしいと願います。
まとめとして、ぜひこの「世界人権デー」をきっかけに、次のようなことを考えてみてください。
- 自分の身の回りで「尊重されていない」と感じる声はないか。
- 多様な背景を持つ人々の存在を、当たり前として受け止められているか。
- 差別や偏見に対し、自分ならどう向き合うか。
- 大切な人に、「あなたの人権を尊重します」と伝えられているか。
小さな一言、小さな行動が、思いもよらない安心と尊厳につながることがあります。「世界人権デー(12月10日)」を、その第一歩にしてみませんか?

