世界トイレの日(11月19日)はどんな日?
✅ 2001年11月19日に世界トイレ機関が設立され、その設立日を記念して制定された国際デー。
✅ トイレが使えない人が世界に23億人もいる現実を知ってもらい、衛生改善を目指す日。
✅ シンガポールの社会起業家・Jack Sim氏と、彼が設立した世界トイレ機関(WTO)が中心となって広まった記念日。
毎日、何気なく使っている「トイレ」。
けれど、もしそのトイレが今日から使えなくなったら、あなたの生活はどう変わるでしょうか?
朝起きて、トイレに行こうとしたら使えない。
外出先でも、公園にも駅にもトイレがない。
それどころか、排泄する場所が「草むら」や「道ばた」しかないとしたら?
実は、それが今も世界の約3人に1人の現実です。
私たちが当然のように使っている清潔なトイレは、世界では「贅沢品」とされることもあります。
そのギャップに光を当て、世界中で「トイレの大切さ」を共有するために生まれたのが、11月19日の「世界トイレの日」です。
この日は、国際連合(国連)が正式に認定した「国際デー」の一つ。つま
り、世界中で一斉に、トイレの問題について考える日なのです。
この記事では、「世界トイレの日」がなぜ11月19日なのか、誰が始めたのか、そしてどんな問題を私たちが共有すべきなのかを、わかりやすく、そしてちょっと感情も込めてお伝えします。
世界トイレの日の由来は?なぜ11月19日になったの?
「世界トイレの日(World Toilet Day)」がなぜ11月19日になったのか?
それは、2001年11月19日に、シンガポールである団体が設立されたことに由来します。
その団体の名前は「世界トイレ機関(World Toilet Organization:WTO)」。
聞きなれない名前かもしれませんが、これは世界中のトイレ問題に取り組むための専門機関として設立されたもの。
この日、WTOの創設と同時に「世界トイレサミット」も開催され、初めて「トイレがないことで苦しむ人々の現実」が国際舞台で語られるようになったのです。
WTOを立ち上げたのは、Jack Sim(ジャック・シム)という人物。
シンガポール出身の実業家で、40代で引退後、自らの人生を社会貢献に捧げる決意をしました。
そして彼が選んだテーマが「トイレ」だったのです。
Jack Sim氏はこう言いました。
「人は誰もが、毎日トイレを使う。でも、トイレの話をすると、みんな顔をしかめる。だから、あえてその“恥ずかしいこと”に真正面から取り組もうと思った」
彼の情熱は世界に伝わり、2013年7月、国連が正式に11月19日を『世界トイレの日』として採択。
これにより、世界各国の政府やNGO、企業、教育機関が、この日を中心にトイレの普及・衛生改善を訴えるようになりました。
世界トイレの日に考えたい、トイレのない生活の現実
トイレのない生活。
想像できますか?
現代の日本でそんな状況は考えにくいかもしれません。でも、世界では今なお約23億人が、適切なトイレを使えずに生活しているのです。
世界人口のほぼ3人に1人。これは、単に「ちょっと不便」という話ではありません。
屋外で排泄をするしかない環境では、排泄物に含まれる病原菌が、ハエや水、土壌を通じて人間に感染し、下痢やコレラ、腸チフスなどの病気を引き起こします。
これが原因で、毎年子どもを中心に何十万人もの命が失われているという事実。
しかも、女性や女の子たちにとってはさらに深刻な問題です。
特に思春期を迎えた女の子たちは、「人に見られるかもしれない」という不安から、学校のトイレが整っていないことで通学を諦めるケースも少なくありません。
「安全で清潔なトイレがあるかどうか」は、教育の機会や自尊心、そして命に直結する社会問題なのです。
トイレはSDGsにもつながっている
「トイレの話は、世界の未来の話」。そう言っても大げさではありません。
国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)の中にも、トイレや水に関する目標がしっかり含まれています。
目標6:「すべての人に水と衛生へのアクセスを確保する」
この目標の中に、次のようなターゲットがあります。
- 安全な水と衛生施設をすべての人に
- 屋外排泄をなくす
- トイレ施設の整備と教育
つまり、「世界トイレの日」はSDGsと直結している日でもあるのです。
環境問題、教育格差、ジェンダーの不平等、健康と福祉、都市整備…。
すべての課題が、トイレという一見小さな場所と密接に関係しています。
世界トイレの日を支えるJack Sim氏の想いと行動
Jack Sim氏は、自ら「Mr. Toilet(トイレおじさん)」と名乗っています。
それは、トイレの話をするときに人々が持つ「恥ずかしさ」や「抵抗感」を和らげるため。
彼は「トイレの話をしやすい雰囲気」をつくることで、社会全体がこの問題にオープンになることを目指しました。
シンガポールでは、公共トイレの質を格段に高める制度を導入。
清潔度を「星」で評価する「トイレ格付けシステム」を推進し、行政とも協力しました。
その活動はアジア、アフリカ、南米などにも広がり、多くの発展途上国でトイレ環境の改善に寄与しています。
Jack Sim氏が作ったWTOは、世界中の専門家やボランティアが参加し、子どもたちへの衛生教育、トイレ設計支援、政策提言などを行うグローバルなネットワークになりました。
世界トイレの日に関するよくある質問
Q1. 世界トイレの日には何をするの?
A. 啓発イベントや教育プログラム、SNS投稿などで、トイレの大切さを共有する活動が行われます。企業や学校でも関連企画が実施されています。
Q2. 日本ではどう取り組まれているの?
A. 日本でもNPOや地方自治体が独自の取り組みを展開しています。バリアフリーやユニバーサルデザインの普及、避難所のトイレ環境整備もこの流れの一環です。
Q3. 私たちができる小さなアクションは?
A. まず「この日がある」ことを周囲に話すことが第一歩です。SNSでシェアする、団体に寄付する、子どもに話すなど、できることは意外と多くあります。
世界トイレの日は、「当たり前」のありがたさを思い出させてくれる
11月19日の「世界トイレの日」は、単なる記念日ではありません。
それは、世界の現実を知るための扉です。そして、何気ない日常のありがたさを、もう一度かみしめる日でもあります。
家のトイレがあること。
鍵が閉まること。
清潔な便座があること。
水が流れること。
それらすべてが、世界ではまだ「当たり前」ではないということ。
ぜひこの機会に、家族や友人と「世界トイレの日」の話をしてみてください。
あなたの一言が、世界の誰かにとっての「希望」になるかもしれません。

