専売特許の日(8月14日)はどんな日?
✅ 1885年、日本初の専売特許が堀田瑞松の「錆止め塗料及び塗り法」に交付された日。
✅ 防錆技術が世界で評価され、日本発の国際的発明となった。
✅ 彫刻家・漆工芸家の堀田瑞松と、明治政府の特許制度創設が深く関わっている。
1885年(明治18年)の夏。
東京の空には入道雲が広がり、セミの声が響いていました。
しかし、霞ヶ関の一角では、日本の歴史を大きく変える出来事が静かに起ころうとしていました。
役人たちが机に並べた分厚い書類。
その中の一枚に、力強く押された印章と、番号「第1号」の文字。
これが、日本で初めて交付された「専売特許」でした。
発明者の名は――堀田瑞松(ほった ずいしょう)。
彼が生み出した「錆止め塗料及び塗り法」は、鉄船の錆を防ぐ画期的な技術。
日本海軍だけでなく、遠くロシアやアメリカの産業現場でも使われ、日本の発明が世界に羽ばたくきっかけとなったのです。
専売特許の日の由来と時代背景
「専売特許の日」は、1885年8月14日に日本初の特許が交付されたことに由来します。
前年から明治政府は近代化政策を急速に進め、鉄道や造船、通信といったインフラ整備が進みつつありました。
しかし、当時の日本には、発明を法律で守る仕組みがありませんでした。
誰かが新しい技術を開発しても、すぐに真似され、利益を得られない。
これでは、誰も研究開発に本気で取り組まなくなってしまいます。
そこで制定されたのが「専売特許条例」。
これは、発明者に一定期間その技術を独占利用する権利を与える法律で、現代の特許制度の原型です。
欧米の制度を参考にしつつも、日本独自の事情に合わせた条文が盛り込まれました。
そして施行からわずか1か月後の8月14日。
8件の発明が同時に特許を受け、その先頭にあったのが堀田瑞松の「錆止め塗料及び塗り法」だったのです。
堀田瑞松の人物像と発明までの道のり
堀田瑞松は、ただの発明家ではありません。彼は彫刻家であり、漆工芸家としても知られる人物でした。
漆という日本の伝統素材に関する深い知識と、工芸の技術を持っていた彼は、ある時、日本海軍から相談を受けます。
「鉄で作った軍艦の錆をどうにか防げないか?」
当時の鉄船は、海水の塩分や湿気であっという間に錆びてしまい、維持費がかさんでいました。
しかも錆が進行すると、船体の強度が落ち、航海そのものが危険になります。
堀田は、漆に防錆性があることを知っていました。
しかし、漆そのままでは耐久性や塗布のしやすさに限界があったため、さまざまな原料を混ぜ、実験を繰り返しました。
幾度も失敗し、配合を変え、乾燥時間や塗り方を調整。
そしてついに完成したのが、「錆止め塗料及び塗り法」。
これを塗布した鉄は、海の過酷な環境下でも錆びにくくなり、軍艦の寿命を大幅に延ばすことができました。
特許第1号「錆止め塗料及び塗り法」の詳細
この技術の革新性は、防錆効果だけにとどまりません。
塗料の成分や塗り方の工夫により、塗装面が滑らかになり、船の速度維持や燃費改善にもつながったのです。
日本海軍はこの塗料を正式に採用。
さらに噂は海を越え、ロシア海軍の軍艦やアメリカのガス会社の貯蔵タンクにも使われました。
つまり、日本の発明が世界のインフラを守る役割を果たしたのです。
明治時代の日本人が生んだ技術が、国境を越えて評価された――これは日本の特許史における大きな誇りです。
専売特許の日の豆知識
- 世界の特許第1号
世界で初めて特許が交付されたのは、1421年のフィレンツェ共和国とされます。
造船技術に関するもので、技術保護の考え方は中世から存在していました。 - 日本の特許証のデザイン
当時の特許証は和紙に墨書きされ、金色の縁取りと公印が押されていました。
現代のA4サイズ印刷とは異なり、格式と威厳を感じさせるものでした。 - 現代との違い
当時の特許保護期間は10年程度で、国際特許条約にも未加盟。
現在は20年が標準で、世界知的所有権機関(WIPO)の加盟国として国際出願も可能です。
専売特許の日と関わりの深い人物・団体
- 堀田瑞松
芸術と科学を融合させた発明家。
伝統素材を現代的に応用し、軍事から産業まで幅広く貢献。 - 農商務省特許局(現・特許庁)
欧米制度を参考に、日本初の特許制度を立ち上げた政府機関。
明治の官僚たちは、制度の確立と運用に奔走しました。 - 日本海軍
防錆塗料の採用により、艦船の維持コストと安全性を向上させた。
専売特許の日に関するよくある質問
Q1:なぜ第1号は堀田瑞松だったのですか?
A1:出願順や審査の進み具合によるもので、同日に交付された他の特許より先に登録されたためです。
Q2:専売特許条例は今も使われていますか?
A2:現在は改正を重ねた「特許法」が施行されています。専売特許条例は歴史的役割を終えました。
Q3:当時の塗料は今でも使われていますか?
A3:原型そのままではありませんが、その防錆原理は現代の塗料技術に受け継がれています。
専売特許の日のまとめ
専売特許の日は、日本の特許制度が始まった日であり、日本初の発明が世界に羽ばたいた日でもあります。
1885年8月14日、堀田瑞松の「錆止め塗料及び塗り法」をはじめ8件の発明が特許を得ました。
それは単なる技術登録ではなく、日本の近代化、産業発展、そして国際社会への第一歩でした。
この日を知ることは、日本人の創意工夫と努力、そして知的財産を守る大切さを知ることにつながります。
今日は何の日(8月14日は何の日)
専売特許の日 | 廃車リサイクルの日 | 裸足(はだし)の記念日 | ハッピーサマーバレンタインデー | 水泳の日 | 裸石の日 | 丸大燻製屋・ジューシーの日(毎月14日) | クラシコ・医師の日(毎月14日)
